JR東日本が開発したのが、FV-E991系電車「HYBARI」JR東日本が開発したのが、FV-E991系電車「HYBARI」 Photo:PIXTA

水素で走る燃料電池電気自動車(FCV)の普及は進んでいないが、鉄道ではいずれ「水素時代」が訪れるかもしれない。昨年から鶴見線・南武線でFC車両の走行試験を行っているJR東日本に続き、JR東海とJR西日本が構想を発表したのである。各社の取り組みと実現に向けた今後の計画とは。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

水素ステーションのネックは
鉄道では問題にならない

 子どものころ、未来の自動車は「水素」で動くようになると漠然と信じていた記憶がある。たぶん、自動車業界の最新動向を伝えるニュースでも見たのだろう。90年代初頭は大手自動車メーカーが燃料電池電気自動車(FCV)の開発を本格化した時代だった。

 2000年代に入るとFCVのリース販売が限定的ながら始まり、2014年にトヨタが量産FCV「MIRAI」を、2016年にはホンダが「クラリティフューエルセル」を発売したが、それ以上の広がりは見えないのが実情だ。

 充電時間と航続距離が課題のBEV(バッテリー式電気自動車)に対して、FCVの水素充填時間、航続距離はガソリン車と同等で、エンジン搭載車に近い感覚で利用できる利点がある。しかし、電気があればどこでも充電できるBEVですら普及が遅れている中で、水素ステーションなど専用インフラを必要とするFCVが主流になるのは難しいだろう。