ちなみにSORAはタンク10本計600リットルで約200キロなので0.3km/Lだ。当然ながら車体が大きいほど燃費は悪くなるが、定員はMIRAIが5人、SORAが79人、HYBARIが約250人だ。相応の輸送需要があれば効率的だが、閑散区間ではMIRAIを走らせた方が経済的になってしまう。全ての気動車をFC車両で更新するにはまだまだコストの壁が高いと言わざるを得ない。

 もうひとつの問題、水素供給体制については2022年5月、ENEOSと鉄道の脱炭素化に向けたCO2フリー水素利用拡大に関する連携協定を締結。2030年までにFC車両、FCバス・FCトラック、駅周辺施設へ、製造・貯蔵に二酸化炭素を排出しない「CO2フリー水素」を供給する定置式水素ステーションを開発する計画を発表した。

 また京浜臨海部に整備予定のENEOS拠点から、JR東日本の自家発電所である川崎火力発電所へ水素を供給して水素混焼発電を行い、首都圏に供給する電車用電力の脱炭素化を進める計画だ。こうした条件から、JR東日本はまず川崎を拠点に水素利用拡大を進めることになる。

JR西日本は関西電力などと
インフラ整備構想で合意

 JR西日本は今年4月、環境長期目標「JR西日本グループゼロカーボン2050」の達成に向けて鉄道資産を活用した水素利活用の検討を開始し、燃料電池列車の開発と将来的な気動車の置き換えを進めると発表した。

 貨物駅などに総合水素ステーションを設置し、燃料電池列車やバス、トラック、乗用車に対する水素供給と、JR貨物による水素輸送の拠点として活用。自治体や企業と連携して、グリーンで持続可能な交通ネットワークを実現するとともに、JR西日本が水素の利用・供給・輸送に関与するプラットフォーマーになろうという意欲的なビジョンだ。

 これを具体化したのが11月21日、「姫路エリアを起点とした水素輸送・利活用等に関する協業」について関西電力、JR貨物、NTT、パナソニックなどと基本合意したとの発表だ。

 4月の発表は鉄道の脱炭素化を強調した内容だったが、今回はFC車両開発の具体化を待たず、関西電力が調達した水素を線路敷やNTTの通信用管路に設置したパイプラインで沿線に供給するインフラ整備構想での合意というのが興味深い。もっとも2030年代の社会実装を目指して今後「実現可能性を調査」するというから、見切り発車感は否めないが、構想の具体化に期待したい。