「もっと当事者に寄り添う仕事がしたい」と考え始めた時、頭に浮かんだのは日本で難民申請をしている人たちだった。学生時代から、「どうやったら紛争をなくせるのか」をずっと考えてきた青山は、ヒントを得るために人づてに難民申請中の人から話を聞いたことがあった。その時、母国での体験の過酷さに言葉を失ったが、同時に日本での生活の厳しさに驚いた。

そもそも、日本の難民認定のハードルの高さは世界トップレベル。例えば、2020年の難民申請者は3936人で認定者は47人と、全体の0.5%しかいない。ちなみに、アメリカは25.7%、ドイツは41.7%など日本とは比べものにならない数の難民を受け入れている国も少なくない。

ここからは、アムネスティジャパンのホームページを参照する。難民認定者は、「定住者」という5年間の在留資格が与えられた後、法律上の要件を満たせば永住の許可も得られる。さらに、生活保障、就労・定住支援も得られる。

一方、難民認定申請中の人たちは極めて不安定だ。在留資格は3〜6カ月で、延長は可能だが、認められる保証はない。これでは、安定した職に就くのは難しい。就労許可を得られる人もいるが、得られない人は1日大人1600円、子ども800円の「保護費」で暮らさざるを得ない。あなたは1日1600円で暮らせるだろうか? 難民申請者から話を聞いて、初めてその窮状を知った青山は、居ても立っても居られなかった。

「最終的に平和構築を目指すとしても、答えが見えずウジウジしてるんだったら、今目の前で困っている人たちのために、なにかできないか」

この時、難民申請している人たちが働ける場所を作ることを目指して、起業する道を選んだ。

当たって砕けろの飛び込み営業

冒頭に記したように、「都市鉱山」というヒントから、中古パソコンを分解して有用金属を販売する事業を思い立った青山。しかし、なんの知識もない。そこで最初にしたことは、買い取り業者を探すことだった。

「まずは売り先を見つけるのが先決だと思ったので、買い取ってくれそうなところを片っ端から訪問しました。それで、なにを、どういう状態にしたら、いくらで買ってもらえるのかを調べました。その後、実際に一台のパソコンからどのくらいの作業で取り出せるのか、友人などからパソコンを集めてやってみました」

青山はこの時、初めてパソコンを分解した。まさに、ゼロからのスタートだったのだ。

 

分解の技術が身についたとして、事業として成り立たせるためには大量の中古パソコンを定期的に集めなくてはならない。2017年10月、ボーダレス・ジャパンから資金援助を受けて、ピープルポートを立ち上げた青山は、ノウハウゼロの体当たりで中古パソコンの回収に取り掛かった。