「もともとやっていたロボットやハードウェアの領域で起業するにしても、製造業的には限界があり難しいと思いました。一方でこの20年を見れば、ソフトウェアのおかげで生きやすい社会になったものの、ハードウェアが関わった瞬間にまだまだ課題が残っていると感じました。そこで人と違うことができれば」(中尾氏)

「助けてもらう力」「伸びる市場の2つの考え方」「リスク評価」──古川健介、岩崎由夏、中尾渓人の起業論
中尾氏

「助けてもらう力」「信じ抜く力」こそが大事

ではその3人が考える、「起業するにあたって最も大事だったこと」とは何なのか。

中尾氏は「全然面白くないんですが、リスクマネジメント。結局それしかない」と語る。

「何をやっていいよ、と言われても若ければ若いほど、リスクマネジメントができないとつぶされてしまいます」(中尾氏)

一方で岩崎氏は「助けてもらう力」こそが大事だとした。

「自分自身が何かについて秀でていたワケではないんです。起業経験もないし、事業を立ち上げた経験もない。コードも書けないところからのスタートだったんです。だからプライドなく、周囲に『お願い』『助けて欲しい』と言い続けました。そのおかげで今とてもいいメンバーが集まっていて、想定していなかった景色を見させてもらっています。それ(助けてもらう力)は今後も役に立つと思っています」(岩崎氏)。岩崎氏は株主が集まるFacebookグループでも、毎日さまざまな相談をしているのだという。

ではそんな相談できる仲間を集められる理由は何なのだろうか。岩崎氏はそこに「信じ抜く力」があるからだとした。

「この人だと見極めて、そのあとには信じ抜きます。だから逆に言うと交友関係は広くないんですが(笑)」(岩崎氏)

三度目の起業経験がある古川氏は、年齢や自身の状況などの環境に合わせて起業することこそが重要だと語る。「20代の頃にやっていた事業は、大企業が絶対できないような匿名掲示板でした。訴訟リスクや刑事リスクも高いのですが、20代だとダメージもそんなにないからこそできます。30代、40代ではできないから有利なんです。ですが40代になると、偉い人との付き合いがしやすくなるので、交渉や営業、座組で勝てるビジネスがいい。だから環境にあった事業を探すのが大事です」(古川氏)

伸びる市場の2つの考え方と、リスクをどう評価するべきか

イベントの最後には、3人から起業を志す人たちへのメッセージが送られた。

「よく言われることですが、伸びる市場に行くことは大事です。それも2パターンあると思っていて、Web3やNFTのような『これから伸びる市場』を選ぶのか、『ずっと伸びている市場』を選ぶのかは違うと思っています。若手なら前者を狙った方が面白いし、30代、40代なら後者だと思います。後者で言えばECは米国で前年比14%増、市場規模で10兆円規模で伸びています。またYOUTRUSTの様に副業なども、ずっと『来ている』と言われていますが、まだまだ成長しています。前者を目指すだけでなく、後者も視野を入れて事業を選ぶといいと思います」(古川氏)