私自身は米国育ちで、アジアにはこの10年ほど住んでいます。アジアに住み始めたのは、Uberで働くためでした。2012年の終わりにUberに入社して、アジアの様々な国での立ち上げに携わりました。それから4年後に退社して、当時急成長していた中国のシェアサイクル・スタートアップのOfoに入社しました。

まず、Ofoでの経験についてお話します。私が入社した当時、Ofoの1日の利用件数はおよそ3000万件でピークに達していました。Ofoがやっていたことは、基本的には自転車を街中に設置するだけ。十分な台数を供給できさえすれば、需要はほぼ無限でした。

ですが、もちろんOfoにも課題はありました。それはハードウェアという現物資産の持続可能性でした。つまり自転車の損失が多く、その追跡もうまくできていませんでした。2016年当時はまだ、Ofoで利用できるような優れたGPS技術が存在しなかったのです。

左から、DIAMOND SIGNAL編集貴社の菊池大介、Beam代表取締役兼CEOのアラン・ジャン氏。セッションはオンラインにて実施した
左から、DIAMOND SIGNAL編集貴社の菊池大介、Beam代表取締役兼CEOのアラン・ジャン氏。セッションはオンラインにて実施した

3年半ほど前にBeamを立ち上げた際にも、資産保持の問題を完結できるかは疑問でした。そこで我々は特注のIoTデバイスを使い、精度の高い資産追跡を実現しました。これによって資産(電動キックボード)の損失を事業の持続が可能なレベルにまで削減できています。

Uberも非常に興味深い事業でした。Uberは昔からある配車サービスをスマホに対応させたライドシェアサービスです。スマホの導入により、サービスの効率は従来の配車サービスと比較して格段に向上しました。

Uberは急成長していましたが、多くの課題もありました。最大の課題の1つは、インターネットやスマホに接続していない、既存の配車サービスがすでに多くの地域で稼働していたことです。また、Uberのような新しいイノベーションには強い反感があり、非常に難しく規制された環境になっていました。

一方、マイクロモビリティ領域には幸いにも、既存産業はありませんでした。Beamでは自社のことを「資産管理企業」と捉えています。テクノロジーを活用した資産管理企業です。BeamはタクシーやUberのようにドライバーが運転するものではなく、ユーザーが自ら運転するサービスです。これによって、Beamではコストを低く抑えることができています。

Beamにとって最大の競合は自家用車です。Beamは、環境汚染や交通渋滞を引き起こす、自家用車に取って代わるサービスとなっています。Beamと都市との協議の多くでは、マイクロモビリティが都市にもたらすメリットを焦点にしており、政府とも直接的に、かつ積極的に関わっています。