画像提供:Knowhere
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同ジムに通う会員の過半数は高校生以下だ。ケガに悩まされた自身の経験から、ケガが原因で好きな野球を断念する人が1人でも減らせる環境が広がることを、斎藤氏は切に願っている。

「これまでプロの選手しか享受できなかった高度なトレーニング環境を、テクノロジーの力で多くの人に届けられる時代になった。本当は僕の会社でそれができたらよかったけれど、僕はAIに明るくない。伊藤さんを応援することが最短最速のルートになると考え、出資を決めました」

斎藤はいい意味でこだわりがない。大きな目的に向かって、柔軟かつ合理的だ。では、ビジネスパートナーとなった伊藤から見て、斎藤はどんな経営者なのか。

「とにかくいつ会ってもポジティブな言葉をかけてくれるんです。僕ら起業家は挑戦しながらも、心の中では不安を感じる時がある。『応援していますよ』という言葉だけでなく行動で、背中を押してもらえるのは本当にありがたい。そして、いつも謙虚で本当に勉強熱心。会うたびに知見をアップデートさせているから驚きます。前向きなオーラで、周りの人を元気にさせる。斎藤さんはそんな力がある経営者です」(伊藤氏)

「物事を疑え」、元日ハム監督・栗山氏から得た学び

「メンタルが強い」と言われることが多いという斎藤氏。なぜ、ポジティブでいられるのか。そう聞くと、よどみのない言葉が返ってきた。

「野球やってた時からずっと、何か壁に当たるたびに『できないことをどうやったらできるようになるか』と考えるのが楽しかったんです。ケガをしたときもそうでした。『どうやったら早く治るのか』『治った後に、どんな自分になれるのか』と想像するだけでワクワクするんですよ。過去の常識にとらわれると、暗い気持ちになっていたかもしれませんが、未来を自由に発想すればクリエイティブな生き方ができると信じています」(斎藤氏)

この発想は、北海道日本ハムファイターズの元監督・栗山英樹氏の言葉、「物事を疑え」から得た学びでもある。

「野球って長い歴史と伝統があるスポーツだから、『これはこういうものだ』と、決まり事に従うような考えになりがちです。でも、『もしかしたら、違う方法があるかもしれない』と発想するだけで希望が持てるし、もっと面白くなるはずなんですよ。そして、希望につながる新しい発想のヒントは、“野球を知らない人たち”から得られることが多い。だから僕は積極的に人に会いに行っています」(斎藤氏)

斎藤佑樹氏が「野球ジム」運営スタートアップに出資──起業から半年で語る「野球未来づくり」への思い
 

どれくらいのペースで会いに行っているのかと聞くと、「毎日です」と即答。IT業界の経営者や、モノづくりの現場で奮闘する人など、斎藤氏はできるだけ“知らない世界”に足を運び、吸収する日々だという。アポを取るときには早稲田大学時代のネットワークが、大いに生きている。