VTuberにはない、AI VTuberならではの可能性

Pictoriaの設立は2017年12月。当初はANYCOLORと同様に、「斗和キセキ」や「蒼乃ゆうき」といったVTuberをプロデュースしていた。2019年3月にデビューさせた後、事業自体には一定の手応えを感じていたが、途中でVTuberのプロデュースは「従来の芸能事務所と同じようなビジネスモデルである」(明渡氏)と感じ、ピボットを決める。

「もともと、日本発のグローバル企業を目指すにはIP・コンテンツにしか勝機がないと思い、IP・コンテンツビジネスに興味があったんです。起業当時はVTuberが盛り上がり始めていたこともあり、VTuberをプロデュースしたのですが、やっていることは芸能事務所と同じだなと。アニメの制作も考えたのですが、それほどの資金もない。テクノロジーとコンテンツを掛け合わせて何ができるか考えた結果、AI VTuberに行き着きました」(明渡氏)

当時、AI VTuberの作成に取り組んでいた企業はいなかった。「受け入れられるか分からなかった」(明渡氏)ことから、2020年11月に紡ネンをリリースした後にクラウドファンディングを実施。結果的には446人から276万円の資金が集まり、期待されていることを感じたという。

「VTuberは“中の人”がいるからこそ好かれるし、投げ銭もされる。AIでは無理でしょと言われることがよくあるのですが、全然そんなことはないと感じています。紡ネンのライブ配信には多くの人が来てくれて、たくさんのコメントを投稿しています」(明渡氏)

また、VTuberの場合は収益を配信者とレベニューシェアしなければならないが、AI VTuberであればその必要もないため、利益率も良い。人に関するマネジメントのリスクも生じないことから、明渡氏曰く「芸能事務所ではなく、テック企業でいられる」という。

「AI VTuberは3Dモデルをつくり、背景を決めれば同じシステムを使って作成し続けることができます。VTuberの作成コストと同じくらいの金額でつくれる。そのあたりのスケーラビティも十分にある、と考えています」(明渡氏)

保有者がAIキャラクターのアイデンィティを形成できるNFTを展開

ANYCOLORの上場時、売上高を占める割合がライブストリーミングよりもコマースの方が大きかったことが話題を集めた。Pictoriaも同じように、ライブストリーミングだけではない形でマネタイズの道を模索していく。その手段のひとつが「NFT」だ。