「全国に2500人の患者がいるはずなのに、治療しているのはわずか450人。しかも、自覚症状が出始めてから受診までに平均で13.8年もかかっています。患者が受診しようとしないのか、患者数が少ないため医者がその病気を知らないのか、はたまた知っていても知識をアップデートしておらず古い治療を施しているのかもしれません」

「HAEに限らず、患者数の少ない病気では、情報が少ない。このような病気を顕在化させ、テクノロジーで人々に適切な医療を受診してもらいたいという思いから、これらのサービスを開発・提供しているのです」(阿部氏)

 

病名を知らなければ、症状が出ていても体質や年齢のせいにしてしまう可能性がある。受診しなければ治るはずのものも治らない。もちろん、受診先は適切な医療機関でなければならない。ユビーを通して症状から考えられる病気についての情報を提供し、適切な医療機関を提案することで、症状が出始めたという適切なタイミングでの治療につなげてもらうことができるのだ。

製薬企業との協業で患者と治療法をつなぐ

前述したように、患者数の少ない病気では、医師が知識をアップデートしていない可能性がある。診る機会が少ないこと、医師の時間も限られていることなどが原因として挙げられるだろう。

ここで重要になってくるのが、製薬企業の役割だ。患者数が少ない病気に対しても、治療薬を日々開発しており、その情報を提供できる立場にいるからだ。

とはいえ、情報提供をMR(医薬情報担当者。製薬企業のセールスパーソン)だけに頼るのは難しい。絶対数が少なく、いつ来院するかわからないHAEなど希少な患者を治療する専門性の高い薬についての情報ばかりを医師に提供するわけにはいかないからだ。医師が、“今、多く診ている症状、病気”の治療法についての情報を得たいと考えるのは、想像に難くないだろう。

そこで、Ubieが次に連携先として考えたのが製薬企業だ。「ドクター、機器、薬──これらが、治療を適切なものにするかどうかのカギを握っています」と阿部氏は言う。

「ドクターの手腕がすばらしくても適切な投薬がなされなければ意味をなさない。薬についての最新情報を、必要なときに得られるようにする必要があるんです」

「製薬企業は、年間2.5兆円のコストをかけて薬を開発している。そのぶん知見がたまっている。しかし、そのように開発した薬が患者に届いているかというと、ものによっては届いていないことがある。それが先ほど例に挙げたHAE。治療薬があるのに、2500人のうち、450人しか治療できていないということは、その薬のポテンシャルのうち20%しか発揮できていないということになるんです。患者には、適切な治療法、適切な薬と出会ってほしい。そしてせっかく治せるのだから治してほしい。そのようなことから、製薬会社との協業を進めています」(阿部氏)