ビジネスの「きも」はSaaSではなく、製薬会社のマーケティング

製薬企業との協業とは何を意味するだろうか。ユビーリンクが生活者と医療機関をつなぐように、ユビープラットフォーム上で医療機関と製薬企業がつながることになる。これにより医師は希少性の高い、また専門外の疾患や医薬品に関する情報、科学的知見を得ることができる。生活者や患者も、製薬企業から疾患や医薬品についての情報を必要なタイミングで得られるようになる。医師にとっても患者にとっても、症状から考えられる病名の選択肢が広がり、適切な薬で治療を施せる(受けられる)というメリットにつながるというのが同社の見立てだ。

Ubieが狙うビジネスの本丸もここにある。医療機関向けサービスの料金は「月額数十万円前後」(阿部氏)、診療所であれば月額1万円と低廉な価格設定をしている。だが、製薬会社のデジタルマーケティング費用を獲得していくことで、大きなビジネスにつなげていく計画だ。一例を挙げれば、武田薬品工業は2025年度までに希少疾患を含めた5つの重点疾患領域での新薬(先発薬)を2021年度比3割増の40品強にする計画を発表している。症状から希少疾患の発見を目指すUbieのサービス群が、新薬のマーケティングの場としても成長することこそがUbieのビジネスの「きも」とも言える。

「わたしたちのビジネスはSaaSモデルではありません。テクノロジーで適切な受診に案内することがゴールなので、そこから逆算していくと、スタートは問診エンジンを精度の高いものにする必要があり、そのために医療機関にサービスを提供した。そのエンジンを使って、生活者向けユビーを開発。ここに、製薬企業の持つ知識が加わるというわけです」(阿部氏)。

Ubieでは2021年4月に武田薬品との協業を発表しているが、現在は国内外の大手製薬企業20社以上との取引がある。資金調達を機に、本事業の開発、またグロースを加速させていく。今回の資金調達も、製薬企業向け事業の人員増強が主目的だと説明する。

また、2024年に施行される医師の時間外労働規制に先がけて、医療従事者の働き方改革や業務効率化を支援するための人員増強、生活者向けユビーのシステム開発や認知向上のための施策にも、調達した資金が使われる。

Ubieの目指す「テクノロジーの力で人々を適切な医療機関に案内する」世の中が実現しつつある。