人を認めるために必要なのは「好奇心を持った観察」

そんな感情や無意識の習慣を変え、言うは易く行うは難い「認める技術」を身につけるにはどうしたらよいのでしょうか。そのヒントはやはりコーチングと心理学の考え方に隠れています。

コーチングではクライアントの可能性を引き出す基本姿勢として、「人は生まれながら才知にあふれた存在である」という前提に立ち、結果や行動だけではなく、クライアントの「存在そのものを承認する」ことを大切にします。

その表現手段として、対話の中から相手のちょっとした特徴や変化を見つけ、見たままのことを伝えることで相手の中に自分自身の存在への承認を生み出していきます。

また、心理学の「交流分析」という分野では人から人への働きかけを「ストローク」と呼び、ストロークこそが人の心の栄養となり自尊感情を育てるとも言われています。

肯定的なことを伝えるプラスのストロークだけではなく、否定的なことを伝えるマイナスのストロークもありますが、そのどちらも人の心を育てることに役立ちます。つまり、人にとってはストロークがない状態がもっとも精神的につらい状況であり、自分に関心を向けてくれる人の存在そのものが自尊心につながるのです。

このことからもわかるように、存在を認めるために最も重要なのは「好奇心を持った観察」です。大げさな成果や結果に着目するのではなく、その人の存在に目を向け、関心を払い、些細なことでも積極的に伝える。この繰り返しこそが、人を認め成長に導きます。そうしているうちに、気づけば褒めることにも抵抗がなくなっていく、と筆者の個人的経験からも感じます。

人を認める上で、必ずしも絶賛・称賛をする必要はありませんし、ましてや思ってもいない肯定的なことを無理に伝える必要などありません。メンバーの存在に好奇心を持ち関わり続けることが、結果的に相手を承認し成長意欲を高めることにつながる、ということを覚えておいていただければと思います。