NFTをかけ合わせることにしたのは「ゼロベースでコミュニティを軸にIPを作っていく、NFT発IPプロジェクトの流れに乗せた方が、応援してくれるファンが集まるような仕組みが作れる」と考えたからだ。

「従来であれば既存の漫画やアニメ、ゲームからフィギュアのようなグッズを作って提供するという流れが一般的でした。でもNFTプロジェクトの場合は『こういうものを作ろうとしています』というDay1の段階から情報を共有し、共感してくれたユーザーとコミュニティを軸にIPを作っていくことができる。シンプルに私がフィギュアを作って販売しますといっても、おそらく全く売れないと思っています。既存のIPや大手出版社が手がけるIP(にひもづいたフィギュア)の方がユーザーも買いたいでしょう」

「(ユーザーの視点では)参加費を払って一緒にプロジェクトを盛り上げていくという意味で、プロセスエコノミー的な要素もあります。もちろんIPやフィギュアをゼロから作るのはものすごく大変ですが、その様子を一緒に体験できるので『推し活(ファン活動)の最上級版』とも言えるかもしれません」(古橋氏)

NFTプロジェクトではプロモーションの考え方も異なる。従来はIPの成長やプロダクトの販売のために企業が販促費に多くの投資をしていたが、NFTプロジェクトの場合はその一部を“コミュニティ”が担う。

そのNFTの価値が高まるほどホルダーにとってもメリットが大きくなるため、NFTプロジェクトの周知拡散など、積極的にコミュニティを盛り上げるインセンティブが働くからだ。

「応援してくれるファンや資金を集めるというクラウドファンディングのような機能や(NFTを)簡単に二次流通できるメルカリのような機能、クリエイターに対して投げ銭感覚で応援できる機能。Web2時代の仕組みを一緒くたに扱えるのがNFTの面白いところだと思っています。ブロックチェーン上のスマートコントラクトといったベースにある技術がしっかりしている上で、その上に何を載せるかは工夫次第です。たとえば二次流通の際にメーカーやクリエイターに収益の一部が還元される仕組みなどもできますし、いろいろな可能性を秘めている。私たち自身もMASKED GIRLS NFTを通じて模索していきたいと思っています」(古橋氏)

古橋氏
 

NFTがものづくり産業の起爆剤に

冒頭で触れた通り、日本からはグローバル規模のIPがいくつも生まれている。産業全体のポテンシャルが高く、絵師を始めクリエイターの数も多い。一方でフィギュアの製作にあたって業界について調べる中で「業界の課題も見えてきた」と古橋氏は話す。