『ベヨネッタ』には658億円の商業規模がある?

テイラー氏のコメントは、ベヨネッタシリーズは4億5000万ドル(658億円)規模のビジネスなので、それを考慮すると自身の演技にはもっと価値があるという主張だ。テイラー氏が何を根拠に658億円という数字を出したのかは不明だが、ここであらためて過去シリーズの販売本数をもとに、ベヨネッタの市場規模を計算してみることにしよう。

初代の『ベヨネッタ』はXbox 360用ソフトとして開発され、発売元のセガがPlayStation 3へ移植した。両ハード用のベヨネッタが発売されたのが2009年のこと。両ハード用ソフトの合計販売数は、 セガサミーホールディングスの2010年3月期決算によると135万本。日本語版の希望小売価格は7980円なので、単純に掛け算すると約107億円になる。

続編の『ベヨネッタ2』は、発売元がセガから任天堂へ変わり、Wii U専用ソフトとして2014年に発売された。任天堂は販売本数を発表していないが、家庭用ゲーム機用ソフトの販売予想で定評のあるVG Chartzのデータによると、売上本数は84万本(うち日本国内では10万本)。また、後日発売されたNintendo Switch版は「2022CESAゲーム白書」によると104万本という数字が掲載されていたため、合計すると188万本。希望小売価格の5980円を掛け算すると、約112億円。

この2作の売上を足しても219億円。テイラー氏の言う658億円には到底及ばないことから、氏の見積もりに根拠はないというのが私の推察だ。

なお、ベヨネッタ関連のコンテンツとしては、劇場版アニメ『BAYONETTA Bloody Fate』も制作されている。こちらの興行収入については加算していないものの、大勢に影響のない範囲だろう。

制作会社は莫大な利益を上げているのか?

テイラー氏がギャランティの交渉を行った相手は、ベヨネッタシリーズを制作するプラチナゲームズだ。プラチナゲームズは本当に莫大な利益を得ているのだろうか。

ベヨネッタ3の希望小売価格は7678円(税込)。このうち約30%は小売店の利益であり、小売店は問屋から5000円程度で仕入れてくる。ショップは、この30%の利益を使って値引き販売やポイント付与などの販売促進活動を行う。

次に問屋の利益は約10%なので、問屋の仕入れ値は4000円強。発売元である任天堂はゲームカードやパッケージを生産するために1000円ほどの経費がかかるため、製造原価を引いた利益は1本3000円程度。この中から宣伝広告費はもちろん、営業など任天堂関係者の人件費も支払われる。