任天堂はこの利益の中から、制作費をプラチナゲームズへ支払っている。制作費の金額や出荷本数次第では採算分岐点を下回り、赤字になってしまうリスクを抱えているのは任天堂側だ。

なおコピーライト表記は「© Nintendo © SEGA Published by Nintendo」なので、『ベヨネッタ』商標は初代『ベヨネッタ』発売元のセガが保有しており、任天堂はその商標を「使用して」新作を発売しているというかたちだ。

これらの要因を含めて考えると、プラチナゲームズは任天堂から正当な制作報酬は得ているだろうが、莫大な利益を上げているとはとても考えづらい。

初心者でも遊べる「プレーヤーが参加できる映像作品」

ここで、ベヨネッタシリーズのゲーム内容についても説明しておこう。プレーヤーが動かすのは(主に)タイトルにもなっている魔女・ベヨネッタ。彼女はタイトな衣装に身を包み、場面によっては肌の露出も増えるが、徹底して「強く、格好いい女性」として描かれているために女性ファンも多い。なお本作のCERO(コンピュータエンターテインメントレーティング機構)レーティングはD。対象年齢17歳以上となっている。

シリーズを通してプレーヤーを「気持ち良く戦わせる」ことに主眼を置いたアクションゲームで、低難易度のモードであれば「ガチャプレー(コントローラーを適当に操作すること)」でも遊ぶことができ、“プレーヤーが関与できる3DCG映画”とも言える。もちろん操作技術が上達すれば、「より美しく」戦えるようになるという懐の深さも持っている。

この作品を開発したプラチナゲームズは、かつてカプコンで『バイオハザード』の企画を経て『バイオハザード2』『デビルメイクライ』『大神』のディレクターも務めた神谷英樹氏と、『逆転裁判』シリーズのプロデューサーを務めた稲葉敦志氏が所属する開発会社。スクウェア・エニックスから発売された『NieR:Automata』の開発も担当し、その技術力は高く評価されている。

彼らが手掛けるゲームの品質は、折り紙付きだということがご理解いただけただろうか。だがベヨネッタシリーズは最新作の発売に至るまで、ある意味での数奇な運命をたどってきている。

続編から発売元が変わった珍しいソフト『ベヨネッタ』シリーズ

ゲームの続編が発売される際に、前作と発売元が変わったゲームはなかったわけではない。しかし、ベヨネッタのように初代の発売元(セガ)が健在のまま、続編が別メーカー(任天堂)になるというケースは珍しい。

もともとプラチナゲームズはセガからの依頼で『ベヨネッタ2』を開発していたものの、セガが開発中止の判断を下したという。これは著者の想像の域を出ないが、当時はセガも、親会社から構造改革を迫られていた時期のはず。ベヨネッタ2発売から間もない2015年には、100人超の希望退職を募集していたほど経営が悪化していたタイミングだ。そのため、高額な開発費を必要とするタイトルにゴーサインを出すことに二の足を踏んでしまったのだろう。