3のリターンフィットは得られるもの全体で考える。お金はもちろん大切である。給料はアップすればベストだが、当初はダウンしても結果を出せばどれくらいの期間でどこまで上げることができそうなのか、またストックオプションはあるのかどうかは確認したい。ただ、ここでいうリターンとは報酬だけで考えるべきではない。その仕事を通じて得られる経験やスキル、人的ネットワークといった無形資産も含めて考えるべきである。

4がカルチャーフィット。社長のリーダーシップや理念、会社の雰囲気や、人材の育て方、一緒に働くメンバーの魅力などは、非常に重要であろう。ただし、この部分だけで判断するのは危険だ。1、2、3の要素がフィットしていなければ活躍することも満足することもできないためである。そのため、カルチャーフィットは4つ目の要素として考えた方がいい。

4つの要素すべてがフィットすればベストだが、そうでなくても、「複数の要素はフィットしていて、その要素が自分にとって、『苦しい時でも信じられる要素、拠り所』になるのであれば合う可能性はある」と長谷川氏はいう。スタートアップはもちろん転職者には即戦力としてパフォーマンスを発揮することを求めているので、大企業に入社した時のように「入ってから教わって身につければいい」くらいの感覚では通用しないと思った方がいいだろう。

転職先候補はデータと一次情報で探すべき

では、自分にフィットするスタートアップをどうやって探せばいいのだろうか。寺口氏は、「転職は転職サイトやエージェントを利用してマーケットインで探すというのも有効だが、自分の現在地からの可能性と選択肢をデータや一次情報で確認して探していくことも大事。そのために、まずはスタートアップに自身と似たようなキャリアの人が転職していないか確認したり、スタートアップにいる人と会って実情を聞いたりして、肌感覚をつけることがおすすめ」と話す。

今の時代、大企業でもスタートアップとジョイントしているケースや、スタートアップのサービスを導入しているケースは多く、学生時代の友人や先輩後輩などでもスタートアップにいる人を探せば大抵見つかるだろう。もし見つからなくても、スタートアップの中の人はSNSをオープンにしている人も多いので、簡単に接触することができる時代だ。

スタートアップにいる人は他のスタートアップをよく知っている人が多く、またスタートアップの中でのネットワークもある。「あなたのキャリアと考え方ならあの会社が合っているんじゃないか」といった具体的なアドバイスを得られる可能性もある。自分の今の市場価値を知るためにも、人脈を広げるためにも、自らSNSやネットを駆使して情報収集するべきだ。