市場環境が激しく変化するなかで、コストは抑えなくてはならないが、抑えすぎると成長できなくなる可能性がある。そのバランスを保つのが非常に難しい時期でもありますし、それが続くとも考えています。また、個人的にはリアルでの対応が増えてきたため、石川県七尾市の自宅に帰ることができない日々が続いたことも大変だと感じました。

中井友紀子 / ARCH代表取締役CEO

──2022年に盛り上がったキーワードは何でしょうか?

不妊治療保険適用。

──そのキーワードを選んだ理由を教えてください。

日本の出生数はどんどん低下しています。日本総研が11月に発表したレポートでは、80万人を大きく下回る予想です。2022年の出生数(日本人)は、前年比5.1%減の77万人前後となる見通し。16年以降、出生数は年率3.5%のペースで減少してきたが、22年はそれを上回る減少率となる見込みです。少子化ペースの加速は、20年から21年にかけて、婚姻数が急減したことが寄与したとみられています。

そうした中、明るいニュースとして最も大きかったのは「不妊治療保険適用」でした。ただし、それでも歯止めがかかるインパクトは見えなかったというのが残念な見立てです。私たちはそこにダイレクトに解を出すべく取り組む不妊治療のDXチームのため、このキーワードを選びました。

──2022年の動きを踏まえて、2023年に個人的に期待している領域、またどういった領域がトレンドになると思いますか?

私たちは不妊治療専門クリニック 「torch clinic」を展開しているということもあり、2023年は「30代で始める不妊治療」がトレンドになると思っています。

──市場環境にも大きな変化があり、上場承認を受けた企業が上場を延期したり資金調達がシビアになったりと、スタートアップも大きく影響を受けた1年だったと思います。起業家として事業を運営する中で大変だったことなどあれば教えてください。

(ARCHは)この環境下で資金調達もしっかりでき、かつ、とても引き合いが多いと感じました。マーケットがシビアになった事は肌では感じませんでした。ですが、「人口=GDP」は国力そのものであると危機感を感じている投資家が多いと感じました。