大企業の社長や起業家、科学者など、いわゆる社会的に成功した方々にたくさん取材する機会を得てきました。その数は、3000人を超えています。誰もが知る有名な会社の社長も少なくなく、「こんな機会はない」と本来のインタビュー項目になかったこともよく聞かせてもらいました。インタビューで会話が少しこなれてきているところで、こんな質問を投げかけるのです。
「どうして、この会社に入られたのですか?」
数千人、数万人、中には数十万人の従業員を持つ会社の経営者、あるいは企業を渡り歩いて社長になった人となれば、仕事キャリアに成功した人、と言って過言ではないと思います。仕事選び、会社選びに成功した人、とも言えるでしょう。ところが、そんな人たちの「仕事選び、会社選び」は、なんともびっくりするものだったのです。
本記事は、『彼らが成功する前に大切にしていたこと 幸運を引き寄せる働き方』上阪 徹(ダイヤモンド社)より、抜粋してご紹介いたします。

藤田晋さんが恐れる「ビジネスパーソンにとって最も危険な環境」とは?Photo: Adobe Stock

主体性を持って選べば、将来に覚悟ができる

 方向性がはっきりしていたから自ら頑張れた、と語っていた人には、サイバーエージェントの創業者、藤田晋(すすむ)さんもいます。1998年、24歳で設立したインターネット総合サービス企業は、今や年商が7000億円を超える会社に成長しました。

 藤田さんは、今までの人生で最も辛かったのは、大学1、2年生の頃だと語っていました。ただなんとなく、ダラダラと過ごしていたから。目標もないまま毎日を送るのは、本当に苦しかったそうです。

 しかし、自ら動いているうちに「会社を作る」という目標が途中で見つかることになります。それからは人生が一気に変わっていくのです。

 新卒で入社した会社では、早朝から深夜までモーレツに働きます。周囲からは、とても真似はできないと言われたこともあったそうです。しかし、藤田さん本人はただ目標に向かって突っ走っていただけでした。頑張ったという意識もあまりなかった。

 持っていたのは、自立したプロ意識のようなものでした。仕事は法人営業でしたが、勤めた会社をクライアントのように考えていたといいます。

 会社の方針、社員への期待、そして求められる成果を強く意識していた。後にそれが、実力となって跳ね返っていくのです。

 ただ、会社選びで大事なことを聞いてみると、一緒に働いて、合うか合わないか、だと語っていました。そして、主体性を持つことだ、と。

 20代前半の頃は、やりたいことや向いていると思うことは、毎年のように変わることが多い。だから、あまり固執しないで、いろいろ試したほうがいい。就活でやりたいことを絞り込んでしまった人は、自分の可能性を狭めてしまったかもしれない、とも語っていました。ただ、軌道修正は何度でもできるし、したほうがいい、と。

 心に留めておかないといけないのは、軌道修正をしていい期間は長くないということです。だから、主体性が重要になるのです。主体性を持って選べば、将来に覚悟ができる。

 そしてもう一つ、藤田さんが強調していたのは、リスクのないところにリターンはない、でした。得られるものが少ないとは、成長する機会が少ないということ。自分を成長させるには、業界や会社が成長していることが大事になる。

 抜擢してもらえない。会社はわかってくれない。そんな愚痴を言っていてもしょうがない。その会社は、そういう環境なのです。だったら、違う環境を選べばいい。自ら主体的に。

 自らを守るには、キャリアを得るしかない、という言葉は印象的でした。経験が得られない環境にいることは、実は最も危険。それは、間違いないことだと思います。

※本記事は『彼らが成功する前に大切にしていたこと 幸運を引き寄せる働き方』上阪 徹(ダイヤモンド社)より、抜粋して構成したものです。