「会社にニッチな面白いことをやりましょうと提案しても、なかなかOKが出なくて。僕は営業以外ぜんぶ経験していて、ウェブページも作れるし、ショッピングカートのプログラムも書けたから、それなら自分でやろうかなと。今考えるとクレイジーですね(笑)。まだ自分の子どもも小さいのに、よくそういう決断をするなと思います。その頃も会社は家族的なところだったので、しっかりやれよと気持ちよく見送ってもらいました」

他メーカーに先駆けてUSBを電源に活用

山光は自ら新たに見出した台湾の会社から商品を輸入して、ECショップを開いた。起業したばかりで資金に限りがあったため、腕時計型のMP3プレイヤー、フラッシュメモリー、液晶モニターのアームなど、日本でほぼ出回っておらずパーソナルな用途で尖った商品に絞り、10種類だけ仕入れた。

前職で付き合いのあった雑誌の編集部に連絡をすると「これは面白い!」と喜ばれ、積極的に誌面で取り上げてくれた。その効果もあり、10種類の商品すべてがすこぶる売れた。

その後もスマッシュヒットを連発し、自分の目利き力とマーケティング感覚に自信を深めた山光は3年目、オリジナル商品の開発に動き出す。

「当時まだUSBはデータ通信用のインターフェースという認識が主流でした。でもUSBは5ボルトの電気を通せるから、電源として使ったらどうかという意見が社内で出たんです。乾電池1本は1.5ボルトなので、3本以内で動く製品ならUSBで動かせるだろうし、コンセントに刺さなくていいなんて便利だし面白いよね、やろうやろう!と盛り上がりました」

最初に考案したのは、電動の爪やすり。社内に電化製品を作るノウハウはなかったので、中国からの留学生に通訳を頼み、中国の工場に発注した。それほど難しい構造のものではなかったので、3、4カ月もすると完成した。

山光いわく、「日本でUSBを電源に使う商品を出したのは、サンコーが初めてだと思う」。そのため「電池の入れ替え不要! USBで稼働する爪やすり」と売り出すとその目新しさと利便性にメディアが食いつき、よく売れた。さらに山光のアイデアから、ヒット商品も生まれた。

「僕はすごく寒がりで、暖房が効いている部屋でも手が冷たくてしょうがない。それで、手の甲をカバーして、指先は自由に動く『USBあったか手袋』を作りました。社内では反対意見が多かったんですけど、世の中の2割の人が冷え性だとして、2割のうちの数%の人が買ってくれたら膨大な数になります。実際にすごく売れました」