Growth Campを率いる樫田光氏と山代真啓氏の2人はメルカリ出身で、データ分析とマーケティングそれぞれで強みを持つ。グロースの“プロ”である2人はChargeSPOTの何に着目し、4倍以上の成長へと導いたのか。本稿では、ChargeSPOTの急成長のきっかけとなった「福岡県限定キャンペーン」での“選択と集中”を紐解いていく。

新プラン導入より「まずは足元の穴から埋めましょう」と提案

INFORICHとGrowth Campの出会いは2020年8月。当時、創業したばかりだっGrowth Campのインタビュー記事を見てINFORICHがコンタクトをとった。

当初依頼されていたのは「ChargeSPOTの新ビジネスプランを話し合う議論への参加」だった。ChargeSPOTは1回ごとに利用料を払ってもらうビジネスプランだが、このころは月額を支払うことでいつでも好きなときに使えるサブスクリプション型の導入を検討していた(サブスクリプションサービスは2022年7月より正式にスタート)。しかし、議論を重ねていくなかで、Growth Campの2人は疑問を強めていったという。

「ChargeSPOTの現状を分析していくなかで、どのグラフを見ても数字が積み上がっているように感じませんでした。経営陣にサービスの課題を聞いてみても、それらしい回答はあるものの、スパッとした数字が出てこなかった。つまり、INFORICH内ではChargeSPOTの課題を数字にして客観的に把握できていない状態だったのです。これは“あるある”ではありますが、INFORICHは自社サービスの成長について漠然とした想いはあったものの、明確な現状把握や具体的な勝ちパターンのイメージを持てていないように見えました」(樫田氏)

当時のChargeSPOTは「充電スタンドの設置台数」を指標にしていた。そのため「このエリアは設置台数が多い」という状態を良しとしていたわけだが、ここにも大きな課題があったと山代氏は振り返る。

「充電スタンドの設置台数を追うことも大事ですが、ユーザーのインサイトも同じくらい重要視すべきです。充電が必要なタイミングにおける純粋想起として『どこ』を想起させるか。カフェ、コンビニ、レストランなど、ユースケースを明確にしないといけない。ユースケースが曖昧なまま台数だけが増えていく課題がありました」(山代氏)

当然だが、どんなにいいビジネスプランを採用しても、穴がある状態では意味がない。Growth Campはサブスクリプション型の導入より先に、ChargeSPOTの弱点を発見することから進めたいと提案した。これに対して、INFORICH代表の秋山広宣氏は思わずうなずく。なぜなら、秋山氏はINFORICH創業前まではコンサルタントをしており、今回のGrowth Campのような改善プランを提案をする側だったからだ。社長になった今、まさか自分がさんざんしてきたはずの提案をされる側になるとは思ってもいなかった。