液体を用いる手法では、真空パックした食材をアルコールなどの液体に入れて冷凍する。冷凍効率自体は高いとされている一方で、必ずしも汎用性は高くはない。例えば刺身などを真空パックすると、形状が変わってしまったり、うまみなどがドリップとして流れ出てしまったりする恐れがある。

上述したように「汎用性の高さ」はデイブレイクの特殊冷凍技術の特徴だ。400社以上の導入企業のうち、7割程度は本格的な冷凍機を導入するのが初めて。冷凍化できる食品の対象が広いことが、顧客層や市場自体の拡大にもつながっていると木下氏は話す。
加えて、アートロックフリーザーには冷凍機内や外部の温度をセンサーで把握し、アラートを出すような仕組みも組み込まれている。冷凍機の中に食材を入れすぎると内部の温度が上がり、急速冷凍の効果が損なわれてしまう。機械側がそのリスクを感知して、ユーザーをサポートするようなかたちだ。


「冷凍機メーカー」ではなく「冷凍ソリューション」の会社へ
現時点でデイブレイクの売上の大半は冷凍機の販売によるものであり、同社が“冷凍機メーカー”であることは間違いない。ただ、単に冷凍機を売っているだけの会社ではなく、冷凍機の販売以外にも複数のマネタイズポイントがある。
木下氏はデイブレイクについて、冷凍機を軸にした冷凍ソリューションの会社であり「むしろ冷凍機を販売してから(のサポート)が重要」だという。
例えば社内には料理人や管理栄養士などから組成された研究開発チーム(ラボ)が存在し、そのチームが中心となって顧客と共同で“冷凍に最適なレシピ”の研究開発に取り組んでいる。
木下氏によると、冷凍化にあたっては通常のレシピとは異なる冷凍用のレシピの開発が成功のカギを握ることも多い。同じ素材でも冷凍の方法次第で品質が大きく変わるからだ。
魚などの素材であれば、冷凍前の処理スピードや冷凍時間によって味や食感に違いが生じる。魚種が同じでも産地や魚の状態が違えば、最適な冷凍の方法も異なるという。
調理した食材を冷凍する場合も同様だ。だし巻き卵であれば、片栗粉を加えることで旨味成分を逃さずに保持できる。寿司の場合は冷凍することで酢飯の風味が飛んでしまうため、通常の酢飯とは異なる専用の酢飯が必要になる──。このような具合に、ラボのメンバーが中核となって徹底的にレシピを研究するのだそうだ。
研究内容については顧客向けに動画コンテンツとしても配信している。ノウハウの共有や顧客同士の交流を目的としたファミリー会(ユーザー会)の開催や、成功企業の現場を訪問するモデル企業視察ツアーも含めて、「冷凍リテラシー」の向上につながる施策には積極的に取り組む。