アートロックフリーザーは個人経営のパン屋から上場企業まで幅広い規模の事業者で活用が進んでおり、発売から約1年半で導入社数は400社を超える。
スタートアップが手がけるこの冷凍機がなぜ注目を集めるのか。デイブレイク創業者で代表取締役を務める木下昌之氏に、その理由や事業を立ち上げた背景を聞いた。
ECサイトで約700万円の売上を記録、老舗店の冷凍煮かつサンド
東京・八王子に店舗を構える老舗店・Jazz Bar & Cafe ROMAN。同店ではアートロックフリーザーを活用し、長年親しまれてきた看板メニューである「煮かつサンド」の冷凍販売を始めた。
従来は店内で提供していたメニューを“冷凍煮かつサンド”として商品化すれば、直接来店することが難しかった消費者にもECサイトを通じてその味を届けられる。ECサイトでは最高で月に約700万円の売上を記録するなど、売上拡大にも大きく寄与した。
商圏や販路の拡大による売上アップは、事業者にとって冷凍化することによるわかりやすいメリットだ。冷凍すれば長期間保存ができるため、食品や素材の廃棄を減らすことで余計なコストを削減し、利益率を改善する効果も見込める。
九州のあるうなぎ店ではデイブレイクの支援を受けて「うな重」を冷凍化し、自動販売機などで提供している。自販機で売ることで営業時間外に非対面で顧客にリーチできるようになったが、変化はそれだけではない。「自販機で購入して気に入った消費者が今度は店舗に食べに来る」といったように、認知拡大や集客の効果ももたらしている。
冷凍技術の活用が、現場の人手不足の解消や働き方改革につながるケースもある。上述したうなぎ店ではセントラルキッチンを取り入れた、新しい店舗のオープンを予定している。新店では店内で複雑な加熱料理などをせず、あらかじめセントラルキッチンで職人が調理して冷凍しておいたメニューを、電子レンジなどで温めて提供するという。
「決められた手順に沿って温めればアルバイトスタッフでも職人の味を再現できるようになるため、各店舗ごとに職人を配置する必要がなくなります。飲食業界では職人の採用が大きな課題になっていますが、(冷凍技術を用いれば)新しいビジネスモデルを実現できる可能性があります」(木下氏)
あらかじめ料理を冷凍しておけば、ピーク時の現場の負担を軽減することもできる。ある弁当店では4名程度の従業員が早朝4時から出勤して仕込み作業をしていた。デイブレイクの冷凍機を導入することでどのような変化が生まれたのか。