ビジネスモデルは違えど、このようなアプローチは旧来のメーカーよりもSaaSを手がけるスタートアップなどに近いかもしれない。
「急速冷凍機を購入している企業でも、実際にうまく活用できているのはそのうちの5%程度ではないかと思うんです。逆に言えば、95%ぐらいの企業に関してはもっとうまく活用できる余地がある。実際に顧客からも(購入後の)サポートやコミュニティへのニーズは高く、それが選ばれる理由の1つにもなっています」(木下氏)
冷凍フードの販売支援も冷凍ソリューションの一環だ。プロデュースした冷凍食品の販売先に困っている顧客も多いため、デイブレイクでは「アートロックフード」として百貨店や小売店などに顧客の商品を代行販売する事業も展開している。
特に今後広げていこうとしているのが海外だ。その一歩目としてシンガポールに拠点を開設し、日本企業が手掛けた冷凍食品のグローバル展開に取り組む。
「冷凍の強みは(手順などに沿えば)いつでもどこでも同じ味を再現できる可能性があること。日本の食品を世界にも出すことで、商圏を大きく広げていくことができます」
「ただ、海外で販売するとなると、コンテナの契約や現地での販売員の採用、プロモーションなどやらなければならないことが多い。特に中小規模の会社の場合、自社だけで海外進出するのは簡単ではありません。デイブレイクが突破口を開いていくことで、顧客のビジネスを後押ししながら、自分たち自身も世界で勝てる企業になっていきいたいと考えています」(木下氏)
“冷凍機屋”生まれの起業家が創業、きっかけはマンゴスチン
近年は「フードテック」と言われるように食の領域で新たな事業を展開するプレーヤーの数が増えてきた。ソフトウェアやアプリだけでなく、調理ロボットなどハードウェアを手がけるスタートアップも徐々に生まれてきているが、「冷凍機」を手がけるスタートアップはかなり珍しい部類に入るだろう。
そもそもなぜ木下氏は冷凍機を軸としたビジネスで起業をしたのか。その背景には自身の生い立ちも深く関係しているという。
木下氏の家系は80年ほど続く老舗の“冷凍機屋”だ。木下氏自身も21歳から10年以上にわたって父親が代表を務める会社に務め、施工管理士として経験を積んできた。
転機となったのは30代で東南アジアを旅したこと。「業界でひと通り経験を積んできた中で、収益は上げられるけれど、何のためにやっているのかが見えなくなってしまっていた」ことを機に、海外へ旅に出かけた。その際に偶然タイの露店で出会った“マンゴスチン”が、木下氏の起業の原体験となった。