「誰もが間違いなく簡単に利用できるインターフェイス」を完成させるには、1つの部署にノウハウを集約し、福岡市全体が利用する1つのフォーマットを作るべきだと考えました。各局や各部が申請事項を作る時には、その部署のノウハウをふんだんに活かす。もしくは用意されたフォーマットに入れ込んでしまったほうが良い。このような発想から、DX戦略課を新設しました。

役所にも非常に多くのベンダーが入り込んでいます。ベンダーは、信頼感のある大きなシステムを構築するのは得意です。一方で、ユーザーインターフェイスについては、工夫がうまくいかないことが多く、動きも遅い。

この分野はスタートアップが非常に得意です。LINEに象徴されるような、「シンプルで直感的な操作性」といったノウハウを、役所でも取り入れていきたいと考えています。

公務員のように月〜金曜日でフルに出勤しなくても良いので、兼業や副業、テレワークも可能なかたちで、第一線で活躍する民間の人たちに全体の仕組みやデザインを考えていただく。役所のメンバーは出てきたアイデアを役所に落とし込んでいく。こんなチームを今後は作っていきたいな、と思っています。

──DX戦略課で募集するDXデザイナーは副業・テレワークでの勤務となります。副業解禁元年は2018年でしたが、近年、行政とスタートアップ従業員などIT人材との共創に新たな形が生まれたと考えています。市長のお考えをお聞かせください。

私は就任して10年になります。福岡市がスタートアップの特区になったのは今から6年ほど前です。

当時、「スタートアップ」という言葉が新聞に出てくることはありませんでした。「創業支援」というのは昔からありましたけどね。

経験や資金、販路といった面では、当然スタートアップより既存企業の方がしっかりとしています。ですが、“新規性”や“とがり”についてはスタートアップの方が圧倒時に強い。なので、既存企業とスタートアップのコラボレーションが出来てきているのは良い傾向だと見ています。

福岡市としても、役所の人間とスタートアップという、強みが真逆な人材間での交流がより進むと良いなと考えています。そのために、国家戦略特区の規制緩和を使い、役所の人間がスタートアップに就職した場合、3年以内であれば役所に戻ることが可能で、退職金にも影響が出ないという制度を作りました。スタートアップから役所に人材が入ってくる流れにも期待しています。