化粧品は医薬品でないため、法律で認められた56種の表現(「頭皮、毛髪にうるおいを与える」や「肌を整える」など)を超える効果・効能はうたえない。だが店舗では説明の際に口頭で認められた範囲を超える表現をしたり、ビフォー・アフター写真を見せたりすることもあるという。

関係者は「ネット広告と比較すれば、店舗での薬機法違反は誤解を生むような大きな違反ではないかも知れません。一方でネット広告は多くの人が目にするため、世の中に与える影響が大きいと思います」と語る。だが、そういった化粧品大手がやってきた手法を新興のD2C事業者が模倣していることも、問題ある広告につながっている側面もある。

一部の外資系プラットフォームは違反広告を「静観」

前編でも伝えたが、一部の悪質なアフィリエイト広告は「成果報酬型」であるがために表現が過激になり、結果として問題ある表現が生まれてきた。彼らは法令に違反すると分かっていながらも虚偽・誇大広告を作成すると前述の業界関係者は言う。

過激な広告を減らすには、もちろん警察当局や厚労省による取り締まりの強化も重要だが、広告プラットフォームについても、問題のある広告を野放しにせず、健全化に踏み切る姿勢が求められる。

後述するが、国内プラットフォーム数社は健全化に向けて自主的に動いている。一方、同業界関係者は「一部の外資系広告プラットフォームは違反を静観している状況だ」と述べ、唇をかむ。米大手SNSのケースでは、広告のチェックを基本的には自動で行っている上、人的なチェックもインドなど海外で行っており、日本の法的観点でのチェックが完全ではないのでないかという声もある。

「WELQ騒動(編集部注:2016年、DeNA運営の医療情報メディア「WELQ」に盗用や情報の誤り、薬機法に抵触するような表現などが多数存在することが明らかとなり、サイトのクローズだけでなく、キュレーション・バイラルメディア全体のあり方が問われるにまで至った一連の騒動)のような大きな社会問題にならない限り、(外資系)プラットフォームが動くことはないのではないかと思っています」(業界関係者)

「BULK HOMME」と「FUJIMI」──2つのD2Cブランドが見る改正薬機法

D2Cブランドを運営するスタートアップは改正薬機法をどう見ているのだろうか。メンズスキンケアブランド「BULK HOMME」を展開するバルクオム代表取締役CEOの野口卓也氏は7月に開催した男性向け化粧品の新商品説明会の質疑の場で「あまりインパクトがあるような事象ではない」と説明した。