「弊社ではトリプルチェック体制で、展開する広告の内容に目を通しておりますので、課徴金制度について何か特別に思うことはありません。一方で、『D2Cブランド』と広くとらえると、もしかしたら一部の会社には何か影響があるのかもしれないなとは個人として思っております」(野口氏)

化粧品大手のポーラ・オルビスホールディングス(以下、ポーラ)が38億円で買収して話題となった、パーソナライズサプリメント「FUJIMI」などを展開するトリコはどうだろうか。改正薬機法対応に向けた同社の対応について代表取締役社長の花房香那氏に取材を依頼したところ、「今回の取材は遠慮させていただきたいです」という回答があった。

改正薬機法の対応に関して、トリコが発言を控える背景には2月に公開した「不適切な表現に関するお詫び」というタイトルのプレスリリースが関係していると見られる。

そこでは「ホームページ等、自社発信の情報に関する調査の過程で、一部のページの記載に疑義があった」、「インフルエンサーの方々の投稿および自社ホームページ、SNS を含むお客様とのコミュニケーションについて不適切な表現があった」などと説明している。薬機法違反には言及していないが、この出来事をきっかけに同社が何かしらの対応を迫られたことは間違いない。実際、花房氏との取材の依頼に関するやり取りの中では「あの一件(編集注:2月のプレスリリースと思われる)の後、全社を挙げて対策をしている」との発言もあった。

対策しているのであれば、なぜその内容を明らかにしないのか。トリコは今年6月、女優の広末涼子さんを起用したFUJIMIのテレビCMを公開した。CMで使われている楽曲は「I won't lie anymore(もう嘘はつかない)」という歌詞で始まる。DIAMOND SIGNALでは同社の買収に関して取材を行い、記事化している。大手企業による買収のようなポジティブな出来事に関する取材には応じる一方、薬機法に対する取り組みについては明言を避けている同社の現状を見ると、その歌詞もむなしく響く。

トリコのように公式で謝罪をした企業もあるが、一方ではネット上にはるかに悪質な広告表現もいまだに散見される。例えば、あるまとめサイトに配置されたバナー広告をクリックすると、「飲み始めて1カ月以内に5キログラム以上の減量に成功した人が実に9割にものぼる」、「宿便をドサッと排出してくれるので、それだけで、3〜4キログラムくらいなら1週間もあれば実感できる」とうたうサプリメントの広告が確認できた。