飲食店が得られるメリットは“ファン”との接点強化

Chompyでアプリを作ることで飲食店はどのようなメリットを得られるのか。大見氏は「手数料が安い」ことと「顧客との接点を強化できること」が強みだと話す。

「Uber Eatsや出前館は37〜38パーセント程度の手数料を取ります。利益を出すには商品価格を高くするしかありません。ユーザーにとっては買いづらいですし、ブランドイメージも毀損(きそん)します」(大見氏)

一方、専用アプリは開発のハードルが高く、マクドナルドやスターバックスといった大手や、スタートアップのCRISP SALAD WORKS、TOKYO MIX CURRYなど、一部の飲食店のみが提供するものにとどまっている。

だが専用アプリで得られるメリットは大きい。例えばマクドナルドの2021年12月期第2四半期決算によると、テイクアウト、ドライブスルー、デリバリーの売上が増加し前年比増収となった理由の1つは、デリバリーやモバイルオーダーを可能にするアプリの提供にある。CRISP SALAD WORKSやTOKYO MIX CURRYではアプリを提供することで、顧客体験を向上させている。

そのためChompyでは、資本力や技術力が不十分な飲食店でもアプリの恩恵を受けられるようにすることを目指す。

「Uber Eatsのようなプラットフォームを利用すると、飲食店は個人情報を取得できません。我々の作ったアプリでは購買データを顧客管理システムにひも付けることで、各顧客に合わせた販促施策を実施することが可能です。例えば(自社でアプリを開発する)TOKYO MIX CURRYでは、一度来店した顧客を『●●さん(ユーザーの名前)ですか』と呼んだり、前回の注文データを元に『こちらもおすすめです』などと伝えます。テイクアウトという1つのチャネルに絞ってもできることは多いと思います」(大見氏)

Chompyのユーザー208名を対象にアンケートを実施したところ、多くのユーザーは決まった飲食店でのみ料理を注文していた。継続的にデリバリー注文する店舗数を聞いたところ、45.8パーセントのユーザーが2〜3店舗、34.7パーセントが4〜5店舗と答えた。これらのアンケート結果からフードデリバリーサービスでは認知を獲得し、その後は独自のアプリでファンとの接点を強化することが重要だと確信した。高額な手数料が発生しないため、価格も適正なものとなる。

2つのChompyは“合流”へ

実はChompyではこれまでにスープカレーの「SUAGE」やカレーチェーンの「ゴーゴーカレー」、サラダ専門店「イテウォンボウルズ」などのアプリを開発している。現在も週に2つ程度のアプリを開発しており、50社以上が導入を検討しているという。5月に公開したある飲食店のアプリは約3カ月で4000回以上ダウンロードされた。