(コロナ禍で)韓国に行けない代わりに「ダミー」と呼ばれる見本映像を送ることになったのですが、最初の1日は家で大まかな振り付けを考え、2日目には一緒に踊ってもらうダンサーに振りを教え、3日目も練習と調整、そして撮影という流れでした。

──振り付けを考えるのはたった1日なんですね。

家ではサビとかポイントとなるところだけ決めます。構成や細かい部分は実際に踊りながら考えます。もっとこうしたほうがカッコいいな、といったように都度修正していきます。

──締め切りもそうだと思いますが、他に仕事をする上で戸惑ったことや、ハプニングなどはあったんですか。

ハプニングではないですが、最後の最後で曲や歌詞の一部が変わる、ということはありました。そのため、ダンスも変更内容に合わせて変える必要がありました。

ただ、それに関しては「わかった、OK!」という感じでした。なぜなら、最後の最後に変更する気持ちがよく理解できるからです。曲にしても、ダンスにしても最高のクオリティを追求するためにギリギリまで諦めずに考え抜き、結果的に変えるという判断は共感できます。全くマイナスなことではないですよね。妥協したくないのは私も同じです。

──K-POPは1つの曲の中でテンポや曲調がガラッと変わる部分が多々あるかと思います。振り付けを考えるにあたって、そこは難しい点ですか。

振り付けを考える上で、曲の展開が多い方がさらに面白いですね。単調だとつまんなくなっちゃうんです。だからこそ、曲に“波”があるK-POPは振り付けを考えやすいです。

──振り付けを考える際に、何を一番大事にしていますか。

アイドルグループの場合は「キャッチーさ」と「踊りやすさ」です。画面越しや舞台で見たときにインパクトがあって、印象に残りやすいこと。そして次に外せないのが実際に踊りやすい流れであるかどうかです。この“流れ”を作るときに、これまで私がダンサーとして「フリースタイル」で踊ってきた経験が生きています。

実は頭で考えた振り付けの通りに踊っても、なんだかしっくりこない時があるんです。それは動きの流れがスムーズではない証拠。そんな時は一度フリースタイルで踊ってみると、どんな流れで踊ると自然に動けるか分かるんです。

音から感じたものをそのまま瞬発的に表現する手法なので、動きに無理がない。だからこそ、振り付けの「流れ」はフリースタイルで踊ってみた時の感覚を優先します。アーティストさんにとっても踊りやすい振り付けであることは大事ですから。