一体、WeWorkにどんな変化が起きているのか。メガベンチャーが新たな本社としてWeWorkを選択する裏側について、ユー氏に話を聞いた。
今までのWeWorkは“雰囲気”を売っていただけ
プライベートオフィスや会議室のほか、メンバー同士のコミュニティエリアに加え、飲み放題のコーヒーやビールなどのアメニティを提供する──コミュニティ型ワークスペースを謳っていたWeWork。彼らの特徴は“フレキシビリティ”にある。
WeWorkは1カ月単位で契約することができ、解約する際も1〜2カ月前に事前報告するだけでいい。“海外で話題のWeWork”に低リスクで入居できるとあって、日本に進出してからは拠点を開設すれば、すぐに申し込み枠が埋まるといった状態が続いた。
「日本、その中でも東京の人たちは『良いものは高くても利用する』というブランド志向がが強いのでしょうか。2018年頃は拠点を開設する前から予約待ちで、最初の20拠点くらいはすぐに申し込み枠が埋まりました。その結果、『黙ってても売れるから営業しなくてもいい』となったり、入居するメンバーから意見を何か言われても『自分たちはブランドなんだから意見を聞かなくてもいい』という状態になったりしてしまったんです」(ユー氏)
ユー氏は2021年1月にWeWork Japanに入社し、同年3月にCEOに就任しているが、もともとソフトバンクで投資戦略に携わっていた人物。WeWork Japanの立ち上げにも関わっており、日本上陸から今に至るまでのWeWorkの歴史を知っている。
拠点を開設したら売れる──まさに“バブル”とも言える状態が続いていたWeWorkだが、2019年9月頃から風向きが変わり始める。
前述のWeWorkショックに加え、2020年は新型コロナが猛威を振るう。先行きが不透明になったことで、足元の資金を確保すべく、コスト削減に動いた企業や個人事業主は多い。ここでWeWorkがウリにしていたフレキシビリティは悪い方向に作用する。
「WeWorkは手軽に解約ができるということで、2020年は解約の選択をする入居者は多かったですね。2020年の1年間は正直、厳しかったです」(ユー氏)
WeWorkのビジネスは立地の良いビルを長期で賃借し、それを小分けにして個人や法人に短期で賃貸するサブリースのモデル。とりわけ、WeWorkは一等地のビルを借りていることから、高額な賃料が発生していたことは想像に難しくない。また、高額の賃料にもかかわらず10年単位で長期契約していたこともあり、固定費の支出がかさんでいたという。