起業家が必ずしもIPO(株式上場)をして多額の資金を得るという金銭的なインセンティブを追い求めて起業し、会社を経営しているわけではないことは重々理解している。

だが、リスクを取ることで高い期待リターンが生じることは資本主義社会においてはあって然るべきだし、昨今では大企業から優秀な人材を獲得する際に給与以外にストックオプション(自社株を一定の行使価格で購入できる権利)を条件として提示するベンチャー企業も多い。

しかし、金融所得課税の見直しによって税控除後の期待リターンが低下すれば、リスクをとるものが減るため、結果としてはユニコーン企業と呼ばれるようなベンチャー企業は誕生しにくくなるだろう。リスクをとるものとは、起業家であり、そこに参画する役職員であり、リスクマネーを供給するベンチャーキャピタルやエンジェル投資家など全てを含んでいる。

格差の是正は重要だが、「全員で貧しくなりましょう」という自虐的な政策にはとても賛同はできない。本件が日本の明るい未来を目指して建設的な議論がなされる契機となるのであれば、個人的には岸田氏に感謝をしたいと思っている。