家庭用ゲーム機は、たとえば任天堂Wiiであれば「Wiiリモコン」、ニンテンドーDSはタッチパネルといったように、特徴ある独自の入力デバイスを備えている。そのため、ハードの性能を生かしたゲームを作ろうとするとそのまま他のハードには移植できないことがほとんどだった。

デバイスの話だけではない、ハードの設計思想もある。PlayStationは極論すれば、ファミコン以前から当たり前だったバックグラウンド(背景)の上に、スプライト(セル画のようなもの)で描いたキャラクターを重ねて表示するというこれまでのゲーム機の常識を捨て、3Dポリゴンの表示機能「のみ」に割り切った、尖ったハードだった。

そのため、ゲームソフトは基本的に発売するハードを決めてから開発を進め、そのゲーム機に特化したソフトを作るのが当たり前だった。その結果、発売されるソフトの価値がイコールでハードの価値となった。1996年には、『ファイナルファンタジーVII』がPlayStationに出るという報道が出た結果、年末商戦でセガサターンの売上が鈍り、PlayStationの売上が増加したという事態も起こった。

しかし任天堂以外のゲーム機はバージョンを重ねるごとに、よりグラフィック性能を強化していくことを最重要視していたため、いつしかPS5やXbox Series X/Sは「安価な高性能ゲーミングPC」とも呼べるようなハードウェアに進化していった。誤解を恐れずに言うと、PS5は15万円相当のゲーミングPCを大量生産することで5万円強の価格で売っていると考えればいい。

ニンテンドースイッチ以外の現行機種は特殊な仕様(スイッチのみ解像度が低いというのも特殊性ではある)がないため、「AAAタイトル」と呼ばれるような大作を含めて、制作したゲームソフトは複数プラットフォームで発売するのが当たり前となりつつある。もちろん、ハードウェアの宣伝目的で「PS4版を出したあと1年間は他機種で発売しない」という独占契約を結び、ハードウェアメーカーから対価が支払われることもある。

では将来的に家庭用ゲーム機の需要は減っていくかと言えば、そうはならないはずだ。

2021年9月下旬以降、ビットコインのマイニングに使われていたPC用グラフィックボードの高騰が落ち着いたおかげでゲーミングPCの価格も下がりつつある。ただ、それでもゲーマーが納得のいくゲーミングPCを買おうと思えば15~20万円となる。ゲーミングPCはPS4からPS5というような明確な世代交代こそないものの、各パーツスペックは日々進化している。3年もするとグラフィックボードやCPUなどを最新のものへ交換したくなり、PS5本体が買えてしまう程度の出費が生じる。