「日本には漫画家と漫画家志望の専門学生や大学生を合わせて数万人ほどのクリエイターがいると言われていますが、漫画だけで生計を立てられている人は1000人ほど。困っている漫画家を助けられればとも思っています。従来の漫画の制作プロセスと比較すると負荷は劇的に下がると思っています。例えばネームだけ、線画だけ、着色だけ、という業務内容になるからです。漫画業界における“働き方改革”とも言えるのではないでしょうか」(朝岡氏)

LOCKER ROOM代表取締役の朝岡優太氏 画像提供:LOCKER ROOM
LOCKER ROOM代表取締役の朝岡優太氏 画像提供:LOCKER ROOM

LOCKER ROOMのスタジオは現在、10人弱の規模だ。ウェブトゥーンという新しい漫画のかたちに興味を持った若手の漫画家などが所属するという。とは言うものの、日本にはまだウェブトゥーン制作の経験がある漫画家はいない。そのため同社ではウェブトゥーンに特化した漫画家の育成に力を入れており、ヒットするシナリオの考え方や、既存の横読みとは異なる「ネームの書き方、視線誘導(読者の視線を意図的にコントロールする手法)、間の作り方といったウェブトゥーンならではの表現を学び、型を作る」(朝岡氏)といった作業をしている。

LOCKER ROOMのスタジオでウェブトゥーンを制作する漫画家 画像提供:LOCKER ROOM
LOCKER ROOMのスタジオでウェブトゥーンを制作する漫画家 画像提供:LOCKER ROOM

またLOCKER ROOMでは10月、日本アニメ・マンガ専門学校との産学連携も締結した。この連携により、漫画を学ぶ学生たちにウェブトゥーン制作を知る機会を提供し、未来のウェブトゥーン作家を創出することをもくろむ。

日本のウェブトゥーンで世界市場を狙う

日本でウェブトゥーン作品を見るにはピッコマやLINEマンガ、comicoなどのプラットフォームを利用するが、プラットフォームによっては韓国や日本以外でもウェブトゥーンを配信している。

そのため、ソラジマでは「この先1年でまずは日本においてソラジマのウェブトゥーン作品の存在感を高めていきたい」(萩原氏)としつつも、Netflixドラマ化され、世界的なヒット作品となった梨泰院クラスのようなコンテンツを生み出したいと考えている。

ソラジマでは7〜8割のコンテンツを「ある程度ヒットが約束された」(萩原氏)既存IPをもとにした作品にすることで収益を生み出しつつも、自社製の独自コンテンツで世界的なヒット作品を生み出したいと萩原氏は言う。

「ソラジマではYouTubeアニメを制作してきましたが、YouTubeには意外にも国境が存在します。ミュージックビデオなどは別ですが、例えばヒカキンさんのチャンネルを観る人のほとんどは日本人なのではないでしょうか。一方、カカオやネイバーは各国で漫画アプリを展開しています。自社に翻訳機能を持っているため、ヒット作品はほぼ自動的に翻訳され、海外にも展開してくれる。YouTubeにはない“国境のない世界”です」(萩原氏)