ソラジマも『俺だけレベルアップな件』の爆発的なヒットに衝撃を受け、ウェブトゥーンの事業化を意識し始めた。その中で同社が勝機を見いだしたのが、ウェブトゥーンの制作体制だ。実はウェブトゥーンの多くは、「スタジオ型」の制作体制を採ることで、作品を「早く、多く」生産できるのだという。
「ウェブトゥーンは従来の横読み漫画とは全く異なる体制で制作されています。(今までの)横読み漫画は1人の漫画家と編集者がペアとなり、アシスタントによる補助もありながらコンテンツを制作しています。一方、韓国で成功している作品はスタジオ型の制作体制です。トップにはディレクターがいて、そのもとに原作者、ネーム作家、イラストレーターなどが配属し、チームによる分業体制でコンテンツを制作しているのです」
「僕たちがこれまでやってきたYouTubeアニメもまさにスタジオ型の分業体制で制作しています。この強みを持っている会社はほかにはないと思い、参入を決めました」(萩原氏)
ソラジマのウェブトゥーンスタジオでは、ディレクターのもと、原作者やネーム作家、線画イラストレーター、着色イラストレーター、背景イラストレーターらを配属。現在は5チームが構成されており、スタジオの合計人数は30人ほどだ。
ソラジマでは8月よりウェブトゥーン作品の『婚約を破棄された悪役令嬢は荒野に生きる。』をcomicoで配信しているが、分業体制での制作により「comico史上初めて、フルカラーであるウェブトゥーンの週2連載を成し遂げた」(萩原氏)という。
「読者は物語が盛り上がってるタイミングで『今すぐにでも読みたい』と考えているため、週2連載を試してみました。漫画アプリ側からすると、収益ポイントが2倍になるため、積極的にプロモーションしてくれます。読者とプラットフォーム、双方のニーズに応えられたのは、スタジオ体制により『早く、多く』コンテンツを出せたからです」(萩原氏)
スタジオ体制で漫画家人口の拡大を目指す
スタジオ体制でウェブトゥーンを制作するもう1社のスタートアップが、2021年6月設立のLOCKER ROOMだ。同社はゲームやアプリ開発支援、IP創出およびプロデュースなどを行う1LDKの子会社で、金額は非公開だが、ゲーム会社のアカツキから資金を調達している。
来年中の作品公開を目指し、現在はコンテンツ制作とクリエイター採用の最中だというLOCKER ROOM。同社では、スタジオ体制でのコンテンツ制作により「漫画に関わる人口の拡大に寄与したい」(LOCKER ROOM代表取締役の朝岡優太氏)と考えている。