ピッコマ」の月間累計販売金額の推移
 

まさに“金のなる木”と言えるウェブトゥーン。2021年に入ってからは市場へ参入する日本のスタートアップも登場した。彼らがウェブトゥーンに見出した勝機とは。

DIAMOND SIGNALでは本記事を含む3本の記事でウェブ漫画ビジネスの“現在地”を特集する。

スマートフォンの普及で韓国国外へも広がる

日本のプレーヤーたちを紹介する前に、ウェブトゥーンが誕生し日本に到来するまでの背景を解説しよう。

ウェブトゥーンが韓国で盛り上がり始めたのは1990年代末〜2000年代初めころだと言われている。当時の漫画出版業界はインターネット時代の到来のあおりを受け不況の波。アマチュア漫画家たちは自分のウェブサイトを作成し、作品を載せた。当時の代表的な作品には「スノーキャット」や「マリンブルース」などがある。

『俺だけレベルアップな件』は単体での月間販売金額が1億円に迫ったことで2020年に話題になった © DUBU(REDICE STUDIO), Chugong, h-goon 2018 / D&C WEBTOON Biz
『俺だけレベルアップな件』は単体での月間販売金額が1億円に迫ったことで2020年に話題になった © DUBU(REDICE STUDIO), Chugong, h-goon 2018 / D&C WEBTOON Biz (拡大画像)

その後、2003年ころからはポータルサイトを中心にウェブトゥーンが掲載され始め、2010年代以降はスマートフォン時代が到来。ネイバーやカカオといった韓国のプラットフォームがウェブトゥーンの配信を開始し、その後は韓国国内に留まらず、中国や日本、タイなどアジアを中心に、世界に広がり始めた。

日本では2013年にLINEマンガや「comico」がローンチ。後発のピッコマは2016年に公開された。中央日報がカカオジャパン代表取締役の金在龍(キム・ジェヨン)氏に実施したインタビューによると、公開から1カ月後、ピッコマの日本における1日の販売額はたったの200円だったという。だが、その後は前述のとおり、爆発的な成長を遂げた。

2019年に公開したウェブトゥーン作品『俺だけレベルアップな件』が大ヒットを記録し、2020年3月には単体での月間販売金額が1億円に迫った。月間販売金額が1年で約11倍に跳ね上がり、日本の出版業界でも話題になった。カカオジャパン広報によると、同作品の月間販売金額は2カ月後の5月には2億円を突破したという。そんなタイミングでウェブトゥーンに可能性を見出し、市場への参入を表明したのがスタートアップのソラジマだ。

ウェブトゥーンの強みはスタジオ体制での制作による“高い生産性”

ソラジマは2019年2月設立のスタートアップ。出版社のIPをもとにYouTubeアニメの制作・配信を手掛けてきたが、2021年8月にウェブトゥーン事業をスタートした。

「2020年3月、カカオジャパンが『俺だけレベルアップな件』のヒットを発表し、日本の出版業界では『ウェブトゥーンは無視できない存在だ』と話題になりました」

「そしてカカオジャパンは同年5月、600億円の資金調達を実施し、時価総額が8000億円を超える企業へと急拡大しました。出発業界の関係者らは当時、『3年前までは“私たちのプラットフォームに漫画を卸してください”と頼んできていたピッコマが、知らぬうちに世界最大の漫画アプリにまで拡大したのか』と驚愕していました」(ソラジマ代表取締役社長の萩原鼓十郎氏)