創業メンバーは筑波大学附属駒場中学・高校時代からの同級生。家庭教師のアルバイトをしていた際の体験がきっかけとなり、ヨンデミーオンラインの開発に至ったという。

「僕や同じバイトをしていた友人の中で“あるある”だったのが、保護者の方から『小さい頃、どんな本を読んでいましたか?』と聞かれることでした。僕が担当していた中学生は国語が苦手で、他教科の教科書を正しく読み進めるのに苦労していて。塾で相談すると『本を読んでください』と言われるものの、実際にどんな本を読んだらいいのか、どのように読んだらいいのかといったことは教えてもらえかったそうです」

「考えてみれば、世の中にも『東大生が読んでいる本ランキング』のように本を紹介するランキングはたくさんあるけれど、本を読むための方法自体を教えてくれる仕組みはない。そこに課題を感じました」(笹沼氏)

笹沼氏はSEGという「多読」を通じて英語力の向上を支援する学習塾で講師を務めていたため、英語に限定されるものの子どもに読書指導をした経験があった。そもそも笹沼氏自身も中学生時代に生徒としてSEGに通い、本を読むことで苦手だった英語を克服した実体験もある。

その考え方を日本語の本にも当てはめたサービスがあれば面白いかもしれない──。楽しむことを大切にしながらも、教育的なアプローチから読書をもっと身近にしていく。そこにAI司書やチャットボットなどのテクノロジーを取り入れることで、より多くのが子どもが読書を楽しめる仕組みを作る。

そのような考えから、ヨンデミーオンラインの構想が生まれたという。サービス開発に当たっては、笹沼氏は大きく3段階に分けてアイデアを検証することから始めた。

まずは「東大生が無料で読書の家庭教師をします」という触れ込みで、対面の読書指導によって生徒の読書習慣がどのように変化するのかを観察する。次のステップではLINEやZoomを活用してオンライン型のレッスンに切り替えてみた。そして最後の段階ではチャットボットのような仕組みを取り入れながら、人手をかける部分を減らしていった。

この3ステップを、それぞれ3人の生徒に試してもらった。ある生徒は読書や国語が嫌いで、心配した保護者が国語専門の塾に通わせていた。以前は自分から本を手に取ることはほとんどなかったが、笹沼氏たちの指導をきっかけに暇な時間には自ら本を読むようになったという。

「次第に『●●(書籍名)の、この部分が面白かった』と自分から本の話をしてくれるようになりました。こうした体験を通じて、子どもたちの『読書嫌い』は嘘で、単に苦手なだけなのだと痛感したんです。やり方さえわかれば、読書は楽しくなるはずだと」(笹沼氏)