反対にこの障壁をうまく取っ払うことができれば、子どもが読書に夢中になれる可能性も高まる。だからこそ笹沼氏たちは独自の児童書データベースを作り、ユーザーの好みとレベルに適した本を紹介できる仕組みを作ることにした。

好みのデータについては、自分たちで児童書を手当たり次第に読みこみ、本の特徴に関する多様な“タグ”を1冊ずつ入力している。たとえば主人公の性格が「好奇心旺盛」なのか「クール」なのかは子どもの好みに大きな影響を与える。「ファンタジー」や「冒険」など本のジャンルも重要だ。

このように主人公の性別や性格から本のジャンル、題材、主要なメッセージ、読み手の感情に至るまで、丁寧にタグを付与していく。細かく分けるとこの項目の数は約200種類にも及ぶそうだ。

好みのデータは本をおすすめする際のキモになるからこそ、1冊2人体制のダブルチェック方式でデータ化を進めているという。

本の要素を示す項目の一例
本の要素を示す項目の一例
主人公の性格だけでも複数のパターンが存在する
主人公の性格だけでも複数のパターンが存在する

そうすることで「この本を読んだ他のユーザーは、他にもこんな本を読んでいます」といった“人”を軸とするレコメンドではなく、「この本が好きなら、(同じような特徴を持った)こちらの本もおすすめ」という“本の内容”に着目したレコメンドができる。

「実際に司書の方が新たな本を薦める際にも、本の内容を軸に考えることが多いです。だからヨンデミーオンラインでもリアルな司書の方に寄せた暖かみのある体験を実現することを意識しました。また『なぜおすすめ』なのかの根拠がしっかりとしていることも重要で、それが明確であることがヨンデミー先生への信頼にもつながると考えています」(笹沼氏)

レコメンドのイメージ
レコメンドのイメージ

もう1つのポイントである「本のレベル」については、複数の要素を基に「YL(ヨンデミーレベル)」というスコアを自動で算出している。

基準になるのは漢字の多さや音読みと訓読みの割合、一文当たりの長さなど。テキストデータを自然言語処理技術を活用して解析し、「30.3」「50.6」といったスコアをつける。

海外ではLexile指数という読解力の指標が普及しており、この指数が書籍を選ぶ際の道しるべとしても使われているが、日本にはそのような指標がない。

「結果的に『3年生におすすめ』のように学年などがその指標として使われています。ただ同じ3年生でも読書好きな子と読書が苦手な子では、全然状況が違う。書店の方からも他に参考にできる基準がなく、困っていると聞きます」(笹沼氏)

ユーザーからのフィードバック(アンケート)をもとに、好みや難易度にあった本をレコメンドする
ユーザーからのフィードバック(アンケート)をもとに、好みや難易度にあった本をレコメンドする

きっかけは保護者からの「小さい頃、どんな本を読んでいましたか?」

Yondemyは笹沼氏を含む3人の現役東大生が立ち上げたスタートアップだ。