ここで一つ、触れておきたいニュース記事がある。スクウェア・エニックスHDの決算発表と時を同じくして、米国のゲーム情報サイト「VIDEOGAMES CHRONICLE」に掲載された、松田洋祐社長のインタビューだ。

インタビューの中で、松田社長は同社のHDゲーム『Marvel's Avengers』はGaaS(Games as a Service)モデルに挑戦したタイトルだったが、それは失敗に終わったとコメントしている。

GaaSはゲームビジネスの救世主となり得るのか

まずは、GaaS(Games as a Services)の定義から、簡単に説明しておこう。これは本サイトの記事「なぜ発売後2年以上のゲームソフトがいまだに売れるのか?」でも説明しているが、「たくさんゲームを発売して、売れたゲームの続編を作る」ビジネスから、売れるタイトルの追加コンテンツを有料で販売し、ヒットしたゲームを末永く遊んでもらうという方針への変換だ。

ただし、この課金モデルをユーザーがすんなり受け入れてくれるかは、ソフトの性質や、課金される「対象」によって大きく変わるということに注意したい。

『Marvel's Avengers』は、ゲーム発売後に操作可能なキャラクターを追加したり、期間限定イベントを開催したりして、長期的にユーザーを楽しませられるような設計になっている。そのアップデートは現在も継続中なのだが、10月に発売した有料DLCのせいで、ユーザーの反発を買ってしまったのである。

そのDLCとは、経験値やゲーム内通貨の入手量が多くなるアイテム「Hero’s Catalysts」と「Fragment Extractors」。F2P(基本無料)のゲームならばまだしも、フルプライスのソフトを購入した上でさらに課金した人だけが有利になるというこのアイテムは、ユーザーからの大きな批判を招いた。猛反発を受けた結果、両アイテムの販売は中止に追い込まれた。

各キャラクターの追加コスチュームを有料で販売しても、クレームを付けるユーザーはほとんどいない。金額に見合うだけの価値を感じる人だけ買えばいいからだ。しかし経験値ブーストアイテムについては全ユーザーに関係することで、かつ不公平感が強かったため、このような大騒動に発展した。この騒動の影響で、今後『Marvel's Avengers』用の有料DLCを販売するのは相当慎重にならざるを得なくなったはずだ。

ゲームソフトによるビジネスは、これまでの買い切り方式から、少しずつでもGaaSへの移行を考えているメーカーは多い。しかし課金対象となる内容はユーザーの納得感を最優先に考え、慎重に検討する必要があるということを思い知らされた一件だ。