30年近く失政によって経済成長できず、デフレ経済に苦しんだ日本において、企業や家計が投資や消費を控えるのは合理的な選択肢だ。そのような状況下でリスク許容度を高め、アニマルスピリッツを持つことなどありえないだろう。

オープンイノベーション税制だけでなく、昨今耳にする機会が増えた賃上げ税制の議論でも思うことなのだが、企業経営者に対して賃上げや投資を要求する前に、まずは国として経済成長を実現してからこれらの要求をしないと不公平なのではなかろうか。

今こそ理解すべき「税金の役割」

オープンイノベーション税制や賃上げ税制は、減税をすることでインセンティブを設けようとする税制なのだが、せっかくなので税金の役割について学んで終わりにしたい。一般的に、税金は何かをするときの財源になると考えている人が多い。たとえば、社会保障や公共サービスのためには財源が必要で、そのために消費税や所得税などを徴収しているという具合だ。

しかし、税金にはそれ以外の役割があることを認識しておこう。たとえば、これまでに出てきた税制は減税することでアクションを促すものだったが、タバコやお酒が身体に悪いとなればタバコ税や酒税を引き上げて需要を落とすことも可能だ。

また、国内のある産業を保護したければ、その産業に対して高い関税をかければ海外との競争にさらされずに済むだろう。所得税などの累進性がある税体系にすることで、格差是正やビルトインスタビライザー(景気を自動的に安定させる機能)としての役割も期待することができる。

このように、税金の役割を正しく理解できれば、なぜ日本が長い間成長を遂げられなかったのかも理解できるはずだ。景気が悪い時に財源が必要だからと言って何度も消費増税をした事実はあまりにも重い。オープンイノベーションという言葉によって本質から目をそらされるのではなく、大前提として国が経済を成長軌道に乗せることが重要という観点から政策に目を光らせる習慣を身につけてもらいたい。