当時ビジネス英会話を学んでいた竹内氏は、書店で「TOEICスコア800」のような単語帳をいくつも目にした。「でも自分が学びたいのはTOEICなどではなく、突然フィリピンに赴任したとしても、現地で使えるような英単語。実際にそれを経験した先輩から『こうやって憶えたよ』というリストを共有できるサービスがあれば便利だと思った」(竹内氏)という。

ただ、畔柳氏はそのアイデアを聞いて「そもそも同一のジャンルでいくつも単語帳があるということは、憶えるプロセスや方法のところに課題があるのではないか」と考えた。そこから議論が進み、2人は“記憶テック”の会社を作ることになる。

当初はtoC向けのアプリとしての色が強かったが、ビジネスとしての可能性やマネタイズの方法を検討する中でまずは教育領域のSaaSとして拡大することを決めた。とはいえ、しばらくは売るのが大変で苦戦を強いられた。

「世の中にあるSaaSの多くは顧客に明確なペインがあって、(そのSaaSによって)何かが楽になったり、コストが削減されたりします。でも自分たちの場合はそうではありません。そもそも顧客は『憶え方』や『記憶』に対してお金を払っていたわけでもなければ、大きな業務負担があったわけでもない。だから何かをリプレイスするわけではなく、生徒の成績が上がるというところに価値を感じてもらって、アドオン(追加)で導入してもらう必要がありました」(竹内氏)

良いものを作っているという自信はあったが、当初はコンセプトで売っている感覚にも近かった。その状況が直近1年ほどで明確に変わってきているという。

コロナ禍で遠隔授業への移行が進み、生徒の状況が今まで以上に見えづらくなり、そこに課題を感じる事業者が増えた。それと並行して、事例が積み重なってきたことで「Monoxerをきちんと使いこなした生徒は、成績が上がっていること」を明示的に示せるようになった。

専門学校や社会人教育領域などへの展開も強化

今後は引き続き学習塾や教育機関向けにサービスの導入を加速させつつ、他の領域にも事業を広げる。

既存の領域で今後鍵を握るのがコンテンツの拡充。「少なくとも教育領域においては、記憶定着をサポートするために必要な機能がそろってきた」(竹内氏)中で、出版社との連携も強化しながらマーケットプレイスの拡大に取り組んでいくという。

また専門学校や大学、社会人教育領域などへの展開も進めていくほか、中長期的には日本国外への展開についても進めていく方針だという。