「『SHIBUYA SCRAMBLE FIGURE』は美術品としても受け入れられるフィギュアを日本から発信したい、という思いで立ち上げたブランドです。IPの魅力を最大化させるフィギュア開発を強みとしており、品質には強くこだわっています。そのため、一般的なスケールフィギュアは1〜2万円ほどの価格帯となっていますが、SHIBUYA SCRAMBLE FIGUREは3〜4万円ほどの価格帯でスケールフィギュアを販売しています」(高井氏)

eStreamの売上高は実数は非公開ながら、2021年度の売上高は前年度から400%を超える規模にまで成長しているという。国内だけでなく中国・台湾・アメリカを基軸にプロモーションを展開し、2021年6月には中国支社を設立。

淘宝(タオバオ)およびWeChat内に直営店をオープンしたほか、イベント出展などを通じて中国国内の販促も強化している。2020年に36億元(約619億円)に達し、2023年には248%成長の91億元(約1541億円)への成長が見込まれている中国のフィギュア市場への展開も強めている。

eStreamの設立は2017年8月。もともとはCyberZが運営するeスポーツ事業のマネタイズ支援を目的に設立された会社だ。当初はeスポーツプレーヤーやゲーム配信者などのマネジメントやグッズ制作を手がけていたが、2020年から事業領域を拡張し、フィギュアブランドを展開している。

なぜ、サイバーエージェントグループの企業が最後発ながらフィギュア事業に参入したのか。その狙いについて、eStream代表取締役社長の高井里菜氏に聞いた。

勢いのある「ABEMA」の アニメチャンネルの存在

もともと、eスポーツプレーヤーやゲーム配信者などのマネジメントを手がけていたeStreamが、フィギュアブランドを立ち上げることにした理由──その意思決定の裏には、サイバーエージェントが“新しい未来のテレビ”として注力する「ABEMA」の存在がある。

現在、ABEMAのビジネスモデルは広告と有料会員(ABEMAプレミアム)が中心となっているが、最近は放送外収益を伸ばすべく、それぞれのチャンネルでマネタイズにつながる新たな事業の立ち上げに力を注いでいる。例えば、競輪・オートレースの投票サービス「WINTICKET」がそうだ。

「ABEMAにはさまざまなジャンルのチャンネルがあり、言うなれば“商店街”のようなものです。たくさんの人が集まる商店街で放送以外の価値を提供するために、ATD(ABEMA Tactical Division)と銘打って、新たな事業の立ち上げに取り組んでいます。SHIBUYA SCRAMBLE FIGUREが立ち上がったのも、その流れからでした」(高井氏)