ABEMAのアニメチャンネルには多くの視聴者が訪れており、その視聴者に向けてどんな新しい価値が提供できるか。最終的に行き着いた答えがABEMAのアニメチャンネルで放送しているアニメを軸にしたグッズの販売だった。

まずはコンビニくじのオンライン版とも言える、オンラインくじサービス「eチャンス!」を展開した後、フィギュアブランドの立ち上げに至った。

「1年ほどグッズ販売の事業を展開していたのですが、その過程で、業界の慣習では『スニーカーとフィギュアだけは新規参入者は作れない』と言われていたので、最初はフィギュアブランドを作ろうとも思っていませんでした。ただ、フィギュア業界は歴史があり、さまざまなメーカーが存在する一方、商品の売り方は特定の場所に行かなければ買えないなど、アナログ中心の設計で今の時代にマッチしていない部分もあると思ったんです」(高井氏)

IPの獲得力とマーケティング力が最大の強み

国内におけるアニメIPのフィギュア業界ではBANDAI SPIRITSやグッドスマイルカンパニーなどのメーカーが知られており、SHIBUYA SCRAMBLE FIGUREは最後発で参入したかたちとなる。当初は「本当にフィギュアが作れるのか?」といった声が多く寄せられていたと高井氏は振り返るが、それを打破するきっかけとなったのが、IPの獲得力とマーケティング力だ。

「ABEMAはアニメチャンネルを運営していることから、人気アニメのIPを獲得できるネットワークがあり、ABEMA上では放送連動型広告ができます。また、eStream親会社のCyberZはスマホ広告の運用などに強みを持っている会社です」

「両方の強みであるデジタルを活用し今までの売り方にとらわれないかたちでフィギュアを売ることができ、業界の常識を変えていけると思いました。高クオリティ・高価格帯であるため、ファンの皆さんにしっかりと実物を見ていただきたく展示企画も行う一方で、SNSや動画などで拡散させていく施策にも力を入れています」(高井氏)

まずはABEMAが培ったネットワークをもとに、アニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』のキャラクターのIPを獲得。その後、さまざまな工場に足を運び、eStreamの考えに賛同してくれるパートナーを見つけることができ、フィギュアの制作が始まった。

『Re:ゼロから始める異世界生活』のキャラクターのフィギュアから始まり、『呪術廻戦』など人気アニメのキャラクターのフィギュアなども制作。着実に実績を増やしていったことで、今や「SHIBUYA SCRAMBLE FIGUREにフィギュアを制作してほしい」といった形で版権元から逆オファーが届くようになっているという。