貧国ニッポン#12Photo:Georgeta Olaru/500px/gettyimages

節税手段が次々とふさがれる中、富裕層への課税強化も進んでいる。急激に進んだ円安は、日本銀行の金融緩和の事実上の縮小で一服したかに見えるが、「弱い円」はまだ続く可能性もある。為替が急激に変動する環境で、富裕層はどのような節税術を選ぶべきか。特集『貧国ニッポン 「弱い円」の呪縛』(全13回)の#12では、富裕層の資産管理の専門家に節税手段の最新事情を聞いた。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

所得30億円超への課税強化
節税手段にも次々と国税の網

 所得が30億円を超える富裕層への課税を2025年から強化――。12月中旬に政府、与党が決定した23年度税制改正大綱に、そんな方針が新たに盛り込まれた。

 年間の所得額が1億円を超えると税負担率が下がっていく「1億円の壁」と呼ばれる逆転現象を是正する狙いだ。

 新たな方針では、資産の売却益や給与などを合算した「合計所得金額」から3億3000万円を差し引いた上で、22.5%の税率を乗じた額を算出。この額が所得税額を上回る場合に、差額分を追加で徴税する。

 追加分は所得に応じて増え、例えば所得50億円だと現行に比べ2~3%程度の追加負担が生じる見込みだ。年間所得が30億円を超える200~300人が対象となる。

 富裕層に対する課税は年々強化されているが、23年度税制改正大綱では、さらに強い方向性が打ち出された。

 課税の強化だけではない。ここ数年、節税手段にも次々と網が掛けられてきた。例えば、近年は足場レンタルやドローンなどの商品の購入によって利益を圧縮し、節税する手段が人気だったが、22年度の税制改正で実質的に封じ込められることになった。

 国税の規制強化だけではない。22年、富裕層には荒波が押し寄せた。それがインフレや地政学リスク、そして急激に進んだ円安である。

 日本銀行が12月に金融緩和の事実上の縮小を打ち出したことで、一時1ドル=150円まで進んだ歴史的な円安は足元では一服している。ただし、今後も「弱い円」が継続する可能性もある。

 それでは、富裕層はどのような資産防衛術を取るべきなのか。富裕層の資産運用・税務・財務管理を手掛けるアレース・ファミリーオフィスの江幡吉昭代表取締役に、節税手段の最新事情を解説してもらった。

 次ページでは、航空機などのオペレーティングリースやドル建て保険、海外不動産など、節税手段のメリットやデメリットを江幡氏に解説してもらい、富裕層にとって現状では最善の節税手段を選んでもらう。