超富裕層の節税手法の定番といえば、多額の損金が計上できる航空機投資であり、それはコロナ禍であっても健在だ。もっとも航空機は高額であるのに加え、実際の運用ではさまざまな注意点が存在し、もめるケースも……。特集『円安・金利高・インフレに勝つ!最強版 富裕層の節税&資産防衛術』(全16回)の#13では、その注意点について、岩崎隼人弁護士に解説してもらった。(弁護士 岩崎隼人)
富裕層に人気の「航空機投資」
実際の運用には注意点が多数
一口に航空機と言ってもさまざまなサイズがありますが、富裕層が個人で投資する候補となるのはビジネスジェットです(プライベートジェットやコーポレートジェットなど用途に応じてさらに区別して呼称することもあります。本稿ではヘリコプターも含めます)。
例えば、ビジネスジェットの一つであるHondaJetは大変な人気であり、小型ビジネスジェットの納入機数としては、2017年から5年連続で世界一になったと発表されています。
ビジネスジェットそのものが持つ華やかさやステータスといった、必ずしも実利には表れない魅力なども考慮されますが、何より自分で利用する際の利便性の高さに加え、節税効果や投資利回りの高さなど実利の面が重視され、投資先として選定されています。特に、昨今は金融市場が芳しくないこともあって、航空機など現物資産の存在感が高まっているといえるでしょう。
とはいえ、航空機投資は高額な出費を伴います。航空機の選定や取得、管理、運用、売却といった投資の各プロセスにおいてそれぞれの見通しを正しく持ち、適切に実施する必要があります。本稿では、これらプロセスにおいて特に注意すべきポイントを解説していきます。
では、まず最初に、航空機を取得する際に、特に契約条件面での交渉において注意するべき点です。
契約条件を交渉する際には、航空機特有の事情を加味しなければなりません。例えば、外装や内装を含む仕様オプションとして選ぶべきものの検討に加え、引き渡し実務や登録手続き、製品保証の内容、製品保証履行請求権以外の売り主に対する請求権(損害賠償請求権、代金減額請求権、履行追完請求権等)などの内容をはじめとして、さまざまな契約条件を交渉して詰めていく必要があります。
また、節税効果を期待して投資する場合には、投資を実行するタイミングも含めて、十分な節税効果を得ることができるかどうか検討が必要です。次ページ以降では、航空機投資の節税効果と共に、航空機を共同保有する上での意外な注意点について解説。続けて、投資実行後の管理・運用・処分の注意点に加え、購入前と購入後に分けて、投資に失敗しないように、必ず考慮しておくべき対策も併せて解説します。