大手製造業にとって円安は増益要因となることが多い。日産自動車やSUBARUといった製造業は好決算に沸いてきた。だが、日本銀行が突如決定した長期金利の見直しで円安是正が進めば、超好業績を謳歌してきた企業の今後は心もとない。大手企業は為替変動で業績にどの程度影響を受けるのか。特集『貧国ニッポン 「弱い円」の呪縛』(全13回)の#9では、時価総額上位で対ドルの為替感応度が判明した超大手企業50社をリスト化した。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
円安はおおむね業績にプラスだが
喜んでばかりいられない理由は?
かつて「加工貿易」という言葉があった。海外から原材料を輸入し、自動車や電気製品に加工して海外に輸出する。日本は「貿易立国」などと自賛していたものだった。
かつての日本の産業を象徴する言葉だが、現在の日本にはまるで当てはまらなくなった。1990年代の円高によって大手製造業は、国内にあった製造拠点を海外に移した。「雇用の空洞化」などが各地で深刻になった。
それでも大手製造業の決算を見れば、円安によって過去最高益を更新する企業が相次ぐ。日本からの輸出ではなく、海外法人が現地で上げた収益を連結決算に取り込み、それが円換算で膨らんでいるケースが多い。
ところが円安は、原材料費の高騰を招くなど、大手製造業にとって「もろ刃の剣」でもある。そこでダイヤモンド編集部は、上場企業のうち、為替感応度(ドルに対して1円円安が進んだ場合、売上高や利益に対して影響する金額)を決算資料などで公表済みか、または取材に回答した時価総額上位50社をリスト化した。
円安は各社にとっておおむねプラスだが、ビジネスモデルの多様化によって、必ずしもそうは言えない影響も見える。一方で、国内生産を貫いて、ドル高のコストに影響されない“強者”もいる。
さらに、日本銀行は12月20日、超金利の変動許容幅をプラスマイナス0.25%程度から同0.5%程度に変更すると決定。為替は一気に130円台前半に振れた。2023年に円高傾向が強まれば、超好業績を謳歌してきた自動車会社などは減益に沈むかもしれない。
各社への影響度を、次のページでぜひ確認していただきたい。