NTT法は必要な措置を講じ次第、2025年の通常国会をめどに廃止――。自民党のプロジェクトチーム(PT)の提言に通信業界は大混乱している。自民党はPTを「NTT法のあり方に関する特命委員会」に格上げして、総務省で行われる法律廃止に向けた議論を監視していく方針だ。特集『NTT帝国の奇襲』の#3では、提言をまとめた自民党の甘利明・前幹事長への独占インタビューをお届けする。甘利氏が25年のNTT法廃止にこだわる理由や、NTT法廃止論に至った経緯、総務省との激しい応酬などを余すところなく語ってもらった。(ダイヤモンド編集部 聞き手/村井令二、編集/千本木啓文)
古い規制を撤廃して
NTTは国際標準に追い付け
――自民党のNTT法の在り方に関するプロジェクトチーム(PT。座長=甘利明・前自民党幹事長)がまとめた提言の結論は、NTT法は2025年をめどに必要な措置を講じ次第、廃止するというものでした。その意義や今後のNTTへの期待を教えてください。
一言でいえば、国際標準に早く追い付こうということです。NTTの前身は国営の日本電信電話公社です。かつて国営だった世界中の電気通信事業は民営化され、参入障壁をなくして競争が行われるようになりました。日本もその道を選んだのですが、途中で(民営化の改革が)止まってしまいました。
世界では通信会社に対する政府の規制はなくしているのに、日本だけに過剰な規制が残っているのです。
最初に挙げるべき規制が、NTTに課された研究開発の成果の普及義務です。こんな規定があったら企業の競争は成立しません。他社とパートナーを組むような場合にも足かせになります。相手の企業がこの項目を見たらすぐ提携をやめたくなりますよ。
なぜこんな規制が残っているのか。圧倒的な独占企業だったときに、技術を周辺の機器メーカーなどに渡して開発しなければいけなかったという何十年も前の事情によるものなのです。
もう一つNTTに課されている責務が、電話を全国で提供するユニバーサルサービスです。メタル回線の固定電話を広くあまねく、電話を敷きたいという人がいたら用意しなさいという義務です。でも6000万世帯以上あった固定電話の加入者は現在1300万件で、これからもどんどん減るでしょう。そういう中でNTTだけに設置義務を課しているのです。
これら二つの責務は見直しが必要です。研究開発の成果の普及義務は撤廃して、ユニバーサルサービスも時代に合わせて変えていくべきです。
二つの責務を担保するためにNTTを縛っているのがNTT法です。同法は、NTT株式の3分の1以上を政府が保有することや、外資の出資を3分の1未満に制限することを規定しています。
ひどいのはNTTの取締役として外国人を選任できないことです。NTTグループ全体の従業員のうち、外国人は半分近くいるにもかかわらず、です。外国人を採用する際、「あなたは優秀だけれど、悪いけど役員には絶対なれない」と言って、「頑張ります」って付いてきますか。代表取締役をどうするか、取締役の外国人割合をどうするかはまた別の話だけれど、一人も登用しないというのは経営の手足を縛ることに他なりません。
そういうところを見直して、早く国際標準の会社にしないといけないのです。
次ページでは、甘利明氏がNTT法廃止論に至った経緯や、NTT法という既得権益を守ろうとする総務省による抵抗などについて同氏に余すところなく語ってもらう。