NTT帝国の奇襲#2Photo:Bloomberg/gettyimages

NTTドコモの井伊基之社長が打ち出した代理店「ドコモショップ」の大量閉鎖の弊害があらわになりつつある。ドコモは2022~25年度までに700店舗を削減する施策を強力に推し進めているところだ。それに並行して、ドコモ本体から代理店へ配賦される「支援金」の絞り込みを急いでいる。今回、ダイヤモンド編集部では、代理店の収入を左右する評価制度を徹底取材。特集『NTT帝国の奇襲』の#2で、ドコモショップの息の根を止めかねない支援金出し渋りの実態を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

ショップを力で支配する
ドコモの代理店評価制度

「ドコモの営業担当者が来て店舗閉鎖の対象になっていると告げられた。理不尽だが、それを拒否して“D”に抵抗するなどできるはずがない」

 首都圏で複数の販売店「ドコモショップ」を経営する代理店の幹部は、NTTドコモのことを隠語で呼びながら、自社の1店舗が閉店に追い込まれたことを明かした。

 NTTドコモは22~25年までにドコモショップの3割を削減するという施策を進めている。初年度に当たる22年4月から23年3月末の1年間で128店舗の削減を断行したが、この対象になったとみられる代理店幹部の証言である。

 ドコモ本社は全国の地方支社と「削減対象の店舗リスト」を共有し、それに従って(地方支社の)営業担当者が所管する代理店を訪問。1件1件に店舗閉鎖を要請したようだ。

 もっとも、ドコモとドコモショップは代理店契約を結ぶパートナーの関係にある。ドコモが一方的に閉店を命じることはできない。それでも“要請”を受けた代理店側は、それを拒否することなどほぼ不可能だった。ドコモはリストアップした代理店と面談を重ねながらじっくり時間をかけて閉店に追い込んでいったようだ。

 冒頭の代理店幹部は「Dからメディアとの接触を禁じられている。発覚すれば代理店契約は即解除になる」として詳細を語ることはなかった。それでも、筆者が短いやり取りを交わすだけで、ドコモが代理店を圧倒的な力で支配している構図がうかがい知れた。

 そうした「奴隷支配」とも言える力関係を決定付けているのが、ドコモによる「代理店評価制度」だ。ダイヤモンド編集部は、ドコモの内部資料を入手。ドコモが設定したノルマの達成率に応じて報酬を支払う制度には、巧妙な仕掛けが隠されていた。次ページで、その手口を明らかにする。