一方、LINE Payは2014年12月サービス開始と、実はコード決済市場では古株だ。LINEアプリに組み込まれているという利便性を強みとして、着々と市場シェアを伸ばしてきた。登録ユーザー数は2019年10月時点で5000万人を突破している。

LINE Payでは2018年8月からは加盟店決済手数料を3年間無料とする施策を展開。政府主導の共通QRコード規格「JPQR」にも参加し、加盟店拡大を図った。

ただ、直近ではプロモーション費用を控えつつ、クーポン配布やLINE Pay クレジットカードの投入など、既存ユーザーの利用機会を増やすような施策にシフトしている。前述の公取委資料によると、2019年4月時点ではLINE Payは25%の市場シェアを保持していたが、2020年5月には5%に低下している。

PayPayの親会社の1つであるZホールディングスとLINE Payの親会社のLINEは2019年11月、経営統合を発表。統合に向けた審査を進めてきた。

2019年12月23日、経営統合に関する記者会見で手を取り合うZホールディングス代表取締役社長の川邊健太郎氏(左)、LINE代表取締役社長CEOの出澤剛氏(右)
2019年12月23日、経営統合に関する記者会見で手を取り合うZホールディングス代表取締役社長の川邊健太郎氏(左)、LINE代表取締役社長CEOの出澤剛氏(右) 撮影:石井徹

最大の競合は「現金」

LINEがグループに加わることで、コード決済市場の圧倒的王者のPayPayは、さらに市場での影響力を高めることになる。ただし、公取委の判断は、両社の統合が直ちに問題とならないと判断している。

政府が2019年9月~2020年6月まで展開したキャッシュレス推進キャンペーンによって、コード決済の利用率は大きく拡大した。コード決済の決済手段としての利用割合は2019年4月の時点では1.76%だったのに対し、2020年1月には7.30%まで増加している。

一方で、決済手段として未だに根強いのは現金だ。2019年4月では52.64%と過半数を占め、キャンペーン期間の2020年1月にも41.58%の決済が現金だ。

同期間にはクレジットカードも利用割合を拡大しているが、30.90%→34.70%と、その伸張は小幅だ。利用動向をみると、クレジットカードは高額決済、コード決済は少額決済とすみ分けが進んでいる。

つまり、コード決済市場は現金の少額決済の需要を奪って成長している格好と言える。

出典:公正取引委員会「令和2年8月4日)Zホールディングス株式会社及びLINE株式会社の経営統合に関する審査結果について」
出典:公正取引委員会「令和2年8月4日)Zホールディングス株式会社及びLINE株式会社の経営統合に関する審査結果について」

また、ユーザーにとっては他の決済手段を選ぶ自由もある。コード決済サービスはアプリを導入してアカウントを登録し、銀行口座やクレジットカードを登録すれば使える。他のサービスへの乗り換えも難しくはなく、複数のサービスを使うユーザーもいる。

コード決済事業者はユーザーを拡大、定着させるために多くのプロモーション費用をつぎ込んでいる。その一方で、ユーザーはキャンペーンを展開しているサービスを渡り歩いて使うような状態になっている。PayPayでは実際、還元額を増額したキャンペーンの実施日のみ大幅に利用額が増えているような状況にある。