相続&生前贈与 65年ぶり大改正#11Photo:PIXTA

家族が亡くなり、相続税の申告をして、ほっと一息ついていたある日、突然やって来る「税務調査」。入られたが最後、実に8割以上が追徴課税の憂き目に遭う。税務署はいつ来るのか。税務署の調査官は何を狙っているのか。特集『相続&生前贈与 65年ぶり大改正』の#11では、新型コロナウイルスの感染拡大による減少から復活しつつある税務調査の内実に迫る。(ダイヤモンド編集部 野村聖子)

「週刊ダイヤモンド」2023年1月7日・14日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

税務署は「死亡翌年の秋」にやってくる!?
相続財産3億円以上のケースがほとんど

 国税査察官(マルサ)と脱税者の攻防を描いた伊丹十三監督の映画「マルサの女」のヒットで、一般に知られるようになったのが「税務調査」だ。

 税務調査は、申告漏れや脱税が疑われる納税者を特定し、税務署の調査官が納税者の自宅などを実地調査する目的で行われるが、大きく分けて2種類ある。

 映画のようにマルサが納税者の自宅に乗り込んでくるのが「強制調査」だ。相当悪質な脱税のケースのみに行われるので、現実にはそうそうお目にかかることはない。

 一般の納税者にも関係してくるのは、もう一方の「任意調査」である。強制調査のように調査官が問答無用で自宅に入ってくることはないものの、“任意”の名とは裏腹に、「拒否することは難しい」と税理士たちは口をそろえる。目を付けられたが最後、応じるしかないというわけだ。

 税理士法人レガシィの天野隆会長によれば、相続税の税務調査が実施されるのは、たいてい被相続人が亡くなった翌年の秋ごろだ。「申告を行った税理士に管轄の税務署から事前に連絡がある」という。

 狙われやすいのは、やはり資産家だ。「あくまでも肌感覚だが、税務調査が入るのは相続財産3億円以上のケースがほとんどだ」と、天野氏は明かす。

 次ページでは、相続の専門家への取材を基に、税務署は実際にどんな風にやってきて、何を狙い、どこをチェックするのかなど、税務調査の実態に迫る。