「お金」大全 #5Photo:PIXTA

変動金利で住宅ローンを組んだ場合、金利の急上昇の影響をある程度抑える「125%ルール」「5年ルール」というものがある。そのルールを適用しても、ローンの総額が増えて返済負担が激増する恐怖は付きまとう。金利が一定の分岐点を越えると、「未払い利息」が発生するリスクもある。仕組みを知り、具体的にシミュレーションして、備えることが必要だ。特集『「お金」大全』(全17回)の#5では、二つのルールに潜むわなと未払い利息発生の構造を解説する。(ダイヤモンド編集部 大根田康介)

変動金利1%上昇で
1兆円の金利負担増

 2022年12月、日本銀行が大規模緩和を修正し、長期金利の変動許容幅を従来の0.25%程度から0.5%程度へと拡大した。

 金利上昇の容認に転じたとあって、「住宅ローンの金利が上がる」という不安が一気に広がっている。

 ただし、慌てふためくのは早計だ。住宅ローンには固定金利と変動金利の二つがある。固定金利は長期金利の動きに連動し、変動金利は短期プライムレート(短期の優良企業向け貸出金利)に連動する。

 このうち、日銀の政策転換の影響をもろに受ける固定金利については、引き上げの動きはすでに広がっている。3メガバンクは10年固定金利を引き上げた。23年1月から基準金利を、三菱UFJ銀行が0.18%引き上げて3.7%に、みずほ銀行が0.3%引き上げて3.5%に、三井住友銀行が0.26%引き上げて3.79%にした。

 その一方で、変動金利については「まだ影響しない」というのが大方の見方だ。

 例えば、住宅ローン比較サイト「モゲチェック」を運営するMFSの塩澤崇COO(最高執行責任者)は、「低金利時代は続く。慌てる必要はない」とみる。

 同社の見立てでは、仮に変動金利が1%上昇すると、国内全体で658万件の利用があるため、合計で1兆円もの金利負担増になる。景気に強烈な冷水を浴びせるほどのインパクトを持つ。その影響の大きさ故に、「賃金上昇→需要増加→物価上昇という経済の好サイクルが回り始めない限り、低金利時代の出口はまだ先」(塩澤氏)というわけだ。

 日銀の金融緩和策修正を受けて、大慌てする必要はない。ただし、無為無策でいいわけでは、もちろんない。知識の備えは必要だ。「住宅ローンは変動金利でいいのか。固定金利の方がいいのではないか」という不安を抱いた消費者による、ファイナンシャルプランナーや住宅コンサルタントなど専門家への相談が相次いでいる。

 だが、よくよく聞いてみると、変動金利の上昇による負担増大を抑えるための「125%ルール」「5年ルール」についてきちんと理解せず、金利上昇の影響を数値化しないまま漠然と不安を抱くケースが多いようだ。

 次ページでは、住宅ローンの変動金利の上昇が家計にどれほど影響を及ぼすのかシミュレーションしてみる。また金利上昇ショックを和らげるはずの125%ルール、5年ルールに潜むわなと、さらに家計を苦しめる「未払い利息」が発生する構造について解説する。