総予測#10Photo:PIXTA

長引くコロナ禍に金利上昇リスクも加わり、不透明感が強まる不動産市況。アベノミクス以降の不動産価格の上昇で、そもそも国内不動産には高値警戒感が台頭していただけに「バブル崩壊」を懸念する声も目立つ。特集『総予測2023』の本稿では、不動産市況の分析の第一人者である吉野薫氏に岐路に立つ日本の不動産市況について分析してもらった。

「週刊ダイヤモンド」2022年12月24日・31日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

22年は底割れを回避したが
23年も回復実感は乏しい

 2022年の国内経済はどうにか持ちこたえ、不動産の実需が大きく損なわれるには至らなかった。

 賃貸市場を確認すると、住宅や商業店舗の賃料水準が全般的に切り下がる様子は見られていない。確かに、東京ではオフィス空室率が高止まりし、賃料も調整局面にある。だが、一部の地方都市では需給が引き締まる様子も観察されており、オフィス賃貸市場の不調が全国的であるとはいえない。

 物流施設も、供給の多い一部のエリアでは賃貸市況の減速感が強まっているが、これまでの絶好調さが一巡したという側面が強い。

 とはいえ、23年については世界経済の停滞は避けられず、日本の不動産に対する実需が一段と力強さを増すような展開は期待薄である。不動産賃貸市場においても、これまでに調整色が強かった分野を中心に、回復や成長の実感に乏しい一年となろう。

次ページでは「賃貸」と比較して、堅調を維持した「売買」市場の23年動向を分析。さらには多くの不動産投資家が気になる、金利上昇リスク」が顕在化して「日銀の金融政策が変更」した場合の不動産市況について、海外動向を踏まえて予測する。