P04-01_図_【確認】貧国ニッポン記事(差し替え)Photo by Ryo Horiuchi

三井不動産レジデンシャルと三菱地所レジデンスが都心に開発する超高級マンション「三田ガーデンヒルズ」。最も高額な棟では20億円を超える部屋も。土地の仕入れ価格や建設コスト上昇の影響でマンション価格の高騰が続く中、大手デベロッパーは5億円台の物件も相次ぎ投入している。実は、デベロッパーが超強気な値付けをする背景にあるのが円安だ。特集『貧国ニッポン 「弱い円」の呪縛』(全13回)の#4では、大手デベロッパーのマンション販売戦略に迫る。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

庶民、パワーカップルを寄せ付けない
「三田ガーデンヒルズ」は最低2億超え

 東京のシンボル、東京タワーの“麓”に開設された「三田ガーデンヒルズ」のモデルルームの玄関前には、白い手袋をはめたスーツ姿の男性が直立不動の姿勢を取っていた。メルセデス・ベンツやBMWといった高級車がモデルルームの駐車場に滑り込むと、その男性がラグジュアリーホテルのドアマンさながら恭しく出迎えた。

「このクラスの大規模マンションはしばらく出てこない」(マンション大手幹部)とライバルをうならせるほど、三井不動産レジデンシャルと三菱地所レジデンス渾身のビッグプロジェクトが、三田ガーデンヒルズだ。今年10月にモデルルーム見学会のインターネット予約が始まると、わずか数分で締め切られるほどの人気ぶりだ。

 旧逓信省簡易保険局庁舎の跡地に建設される三田ガーデンヒルズは、東京ドームの半分にも及ぶ敷地面積約2万5000平方メートルに1002戸を構える。東京都港区では最大規模の高級マンションだ。

 マンション住民には、帝国ホテルのコンシェルジュサービスをはじめ、共有施設にはバーやカフェラウンジ、さらにフィットネスやゴルフレンジなど、贅を尽くしたサービスと空間をしつらえる。

 これだけ極上の邸宅を演出する三田ガーデンヒルズ。庶民はもちろんのこと、世帯年収1000万円のパワーカップルがいくら背伸びしても手が届かない代物である。1戸当たり最低でも2億円、最高で20億円超えともいわれる超高級物件だからだ。

 折から続く土地の仕入れ価格や建設コストの上昇は、三田ガーデンヒルズの値付けに影響している。だが、不動産業界関係者はこう言って首を傾げる。「当初の坪単価より1.5倍近く値上がりしている。三田ガーデンヒルズの価格は強気過ぎる」。

 ではなぜ、三井不動産レジデンシャルと三菱地所レジデンスは強気な値付けに踏み切ったのか。もちろん、新築マンションの強気な価格戦略を展開するのは、三井不動産レジデンシャルや三菱地所レジデンスだけではない。ライバルである住友不動産や野村不動産ホールディングス、東急不動産ホールディングスも同じだ。

 実はこの強気な価格戦略は円安と無縁ではない。次ページでは、円安時代におけるマンションデベロッパーの販売戦略を解き明かす。強気な値付けでも買い上げをためらわない“お得意さま”の正体とは。

 また、マンションデベロッパーが展開する新築マンションの販売戦略によって、所得額などで都心の明確なエリア分けが進みそうだ。中心地に住むことができる層とは。近未来の都心の“予想図”も示す。