AIや5G(第5世代移動通信規格)、EV(電気自動車)などのメガトレンドを背景に、ここ数年堅調に業績を伸ばしてきたエレクトロニクス業界。一方、事務機器などの需要は減少。製品ごとのトレンドが浮き彫りとなった。円安が追い風になっているものの、原料高の負担も増している。特集『倒産危険度ランキング2024&初公開!企業を倒産させた金融機関ランキング』の#6では、電機・精密業界の倒産危険度ランキングを作成。21社が“危険水域”入りしていることが判明した。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)
シャープが巨額赤字転落!
危険度ランキングで16位に
シャープが変調を来している。2023年3月期の決算で2608億円もの最終赤字を計上し、6期ぶりの赤字に転落したのだ。
巨額の赤字を招いた元凶は、液晶パネルの生産子会社である堺ディスプレイプロダクト(SDP)だ。パネルの生産設備の収益力見直しにより、液晶関連で1884億円を減損損失として計上したことが響いた。
SDPは、もともとシャープが09年に約4300億円を投じて設立した企業が前身だ。
しかし、中国や韓国のメーカーとの価格競争で採算は悪化。過去の業績低迷の要因となるなど、何かと重荷となってきた。結局、シャープが台湾の鴻海精密工業に救済される中で、鴻海の創業者・郭台銘氏の投資会社がSDP株の過半を取得。郭氏は19年までに海外ファンドなどに売却した。
ところが、22年6月にシャープはSDPを再び子会社した。
当時シャープは、「ディスプレー需要は今後も拡大が予想され、将来の競争力の強化につながる」とSDPの子会社化を正当化した。しかし、過去の業績悪化の要因であり競争力に乏しいSDPを再び子会社化することは、誰の目から見ても違和感があった。
そして、その不安が的中した。子会社化を決めた直後からパネル市況は急激に悪化し業績は下降、冒頭の減損に至る羽目となった。
シャープは足元の23年7~9月期で11億円の営業黒字となり、5四半期ぶりの黒字に転換している。しかし、液晶パネル事業では同期間で123億円の営業赤字を計上しており、この苦戦はしばらく続きそうだ。
電機・精密業界では、AIや5G(第5世代移動通信規格)、EV(電気自動車)といったメガトレンドを背景に、業績を伸ばしてきた企業も多い。一方、裾野の広い業界だけに、事務機器や黒物家電のように苦戦する製品もある。
今回、電機・精密業界で倒産危険度ランキングを作成したところ、21社が“危険水域”入りしていることが判明した。シャープは16位にランクイン。早速、次ページでその全貌を見ていこう。